異世界イストワール  第9章~真実と復讐と旅立ち~  その6

~前回のあらすじ~
魔物の能力を解放する様に命じられ、ノラマは緋色のフードを脱ぎ、8本の蛇を出した。しかし、人間界へ居過ぎたせいで上手く能力を制御する事が出来ないと制止するギルティを真向から否定したのは、突如現れた滅神王次男ヘンリであった。
そして、ヘンリは自分が本当の兄だとノラマに言い寄るが、少年は否定する。それとは逆に、サリエルを兄だと言い張るのであった。そこで、ヘンリは上手くサリエルを利用しようと考え———————。

※文章が粗いかもしれんが、すまん。

以下は続きです。


*ニルバーナの村が戦火に燃え始めた。村人達の殆どが召喚された魔物どもに殺され、今までのニルバーナの面影は無い。
そんな中、シャクはレイアとヒカルと共に未だ生き残っている村人達を庇いながら各々の武器を構え、襲い来る魔物どもと対峙していた。
「くそっ、キリがねぇーなっ・・・」
ヒカルは言いながら魔法書を広げ、詠唱可能になった炎属性魔法や、氷属性魔法、雷属性魔法を連発して詠唱し、魔物どもを打ち倒していく。
シャクも彼に負けずと鋼の剣を振り下ろす。
「本当だよなっ!」
レイアはお得意の爪で魔物の肉を抉る。
「全く、相変わらず鬱陶しい連中だわねっ!・・・・で、ミーシアさん達は何所?」
レイアの問い掛けにシャクは戦火の渦の中の村を見回し、魔物を斬り捨て返す。
「分からない。魔物が多過ぎて何がなんだか分からない。」
ヒカルは魔法を連発し、疲労し切った顔で荒い呼吸を繰り返す。
「ヒカル、大丈夫か?」
「あァ・・・平気だ・・・」
「でも・・・」
「俺の事は良い。今は村人達を魔物から守る事だけ考えろ。」
魔法使いの言葉に勇者は頷き、襲い来るであろう魔物に剣を向け、迎え撃つ。
「来るぞ!」
「あァ。」
「打っ飛ばしてあげるわよ!」
三人は意気込むと戦力を高めた。



ヒルダは噛み付こうとして掛かって来た魔物を刀で斬り捨てると、傷付いた腹を押さえ、舌打ちをする。
———————くそ・・・さっき回避出来なかったのが・・・失敗だったぜ・・・。
ミーシアから貰った深緑色のマントのおかげで、少しずつではあるが回復している。
顔を歪め、荒い呼吸をしている上司を横目で見、オルバは魔物どもに刺々しい鞭を打ち当てる。
「ヒルダさん、もうお疲れですか?」
「全然疲れてねぇーよ。」
「そうですか。それでしたら、この戦いが終わったら俺と一戦やってくれますよね?」
ヒルダは襲い来る魔物どもを斬り殺し返す。
「あァ・・・だが、テメェーがこの戦いで死ななきゃ良いがな・・・」
「それはこっちの台詞ですよ。ヒルダさんこそ、俺と殺り合う前に死ぬんじゃないですか?俺ァ、それが心配なんすけどね・・・・おっと、危ない。」
茶髪の青年は魔物の攻撃を回避し、鞭で絞め殺す。
「それにしても、ヒルダさんも強がりですねぇ。」
「何の話だ?」
ヒルダは斬る。
「何って、あの女の事ですよ。・・・・本当はあの女と一緒に居たかったんじゃないですか?」
「馬鹿言え。あんな馬鹿女となんざァ死んでも一緒に居るかよ。こっちがまいっちまう。」
彼は吐き捨てる様に言うと、魔物の肉を抉った。
オルバはそんな彼の言葉を聞き、鼻で笑う。
「フフ、格好付けてさ。」
「格好なんか付けてねぇーよ。」
「付けてるって・・・ねぇ、コネンドさん?」
青年は少し遠い場所で戦っている男へと声を張って問い掛けた。
男は魔物を斬り捨てながら返す。
「同感だ。」
「何でっ?」
同意を貰ったオルバは笑う。
「だってさ。コネンドさんだってそう言ってらァ。」
そう悠長に言う青年の背後に魔物の影が忍び寄る。しかし、青年は背後を鞭で攻撃すると<ご苦労さん>とだけ言い、次の獲物を探す。
ヒルダは次第に回復しつつある腹を押さえ、唇を噛む。
———————格好なんざァ付けてねぇーよ・・・唯・・・・。
「ヒルダさんっ!危ないっすよ!」
「っ!」
ヒルダはオルバの声に我に返り、襲い掛かって来た魔物どもを斬り捨てた。そして、呼吸を整える。
「余所見は駄目ですよ、ヒルダさん。」
と青年。
「余所見はしてねぇーよ。つーか、一々うるせぇーよ。少しは黙ってろ!」
「へいへい。」
オルバは面倒そうに返事をすると、目の前の魔物を絞め殺した。



ノアは気絶させた最愛の妹を抱き、村人を安全な村の外へ誘導し、エルガの家を訪ねる。
「チルノさん!!」
家の中に妹を抱いたノアが駆け込んで来て、フライパンを構えていたチルノは驚いた。
「ノアっ!」
恐らく、魔物が上がり込んで来たのと勘違いしたのだろう。
「チルノさん!逃げましょう!此処は危険です!」
「でも、皆さんが・・・」
「良いから、逃げましょう!あの人達は死にはしませんって!」
ノアは必死に叫んだ。
「逃げましょう!早く!」
青年は背後に何か気配を感じたらしく、舌打ちをする。
———————魔物に気付かれたかっ!
ノアは気絶したミーシアをチルノに託し、ナイフを握り、二人の前に立つ。
そして、言い放つ。
「此処は俺が引き受けますから、チルノさんはミーシアと一緒に裏口から逃げて下さい!」
「ノアはっ!」
「良いから、早く!!」
青年は叫び、雄叫びを上げて魔物へと飛び掛っていった。
そんな彼をチルノは涙目で眺め、振り返らずに彼の最愛の妹を連れ、逃げた。



「魔物を召喚するなど一般染みてあまり好きでは無いのだが・・・手っ取り早く済ませるにはこれが十分なのだ。」
滅神王ヘンリは魔物の襲撃に足掻く人間達を眺め、素気ない表情をして言い放った。
一方、魔王が魔物達を召喚した為、仕事が無くなったと地面にしゃがみ、拗ねている大悪魔神官アプフェル。
そんな部下を呆れた様な顔で眺め、溜息をつく。
そして———————。
「サリエルとか言ったな・・・俺達と共に滅界へ来てもらいたいのだ。」
とヘンリは言い放つ。
それに応じてサリエルは不適に哂った。
「あァ、御名答だからな・・・大人しく滅界とやらについて行ってやるよ。・・・・・・・だがな、一つ、持って行きたいモノがある。」
ヘンリは少し怪訝そうな顔をしたが、すぐに戻す。
「何なのだ?」
青年は魔物と必死に戦っている男を睨み、言う。
「あの男だ。」
ヘンリ達はサリエルの目線の先の男——————魔物の戦っているアーノルドを見る。そこで、魔族達を除く全員が驚愕する。
「何故だ?」
魔王の問い掛けにサリエルは妖艶な笑みをし、哂いながら言い放つ。
「もし・・・滅界とやらに着いて暇だったらの時の玩具だよ。魔物の攻撃だけじゃ死なないだったら、俺が始末してぇーじゃねぇーか・・・・父さんの仇としてな。」
「サリエル、正気か!?」
とラヅ。
二呼吸程後。
ノラマ——————エウリアが燃える村を見ながら、サリエルに問い掛けた。
「出発するノ?」
「あァ。」
ヘンリは男の言葉を聞き、拗ねている部下へ呼び掛けた。
「おい、アプフェル。お前に仕事を与えてやる、有り難く思えよ。」
彼は鼻を啜り、小声で呟く。
「仕事って・・・何さ?」
「サリエルが持って行きたい人間が前方に居るのだ。あれを殺さず気絶させ、連れて来い。」
魔王の命令にアプフェルは涙を拭い、よろよろと立ち上がると、疾風の如くアーノルドの方へ向かって行った。
それを見届け魔王は魔界へ帰る為魔法陣を描く。それを横目で見、サリエルとノラマも後に続く。
そんな彼に向かってギルティが叫ぶ。
「おい!待てよ!何勝手に村を出て行こうとしてんだよ!」
しかし、彼等は立ち止まらないし、振り返らない。
そこへ、ヴェロニカが彼等の後に続こうとして歩を進めたが、ラヅに腕を捕まれ止められた。
「放して下せぇっ!自分はサリエルさんと・・・」
「行くな、ヴェロニカ。」
「何で!」
「お前が行ったところでサリエルは元には戻らない。」
「っ!」
「それに・・・・」
ラヅは言葉を切り、魔法陣へ歩んで行く彼等を眺め続けた。
「それに・・・・サリエルがお前を連れて行かないところを見ると・・・・あいつ自身が崩壊して行く様をお前に見せたくは無いからだ。・・・・この先、醜く変わっていってしまう己をお前に見せたくは無いからだ。」
ヴェロニカの藍色の目から涙が溢れた。そして、消え往く愛しい青年の背中を見た。

どれほど手を伸ばしても届かない。
どれほど歩を進めても辿り着けない場所へ行ってしまう。
どれほど叫んでも彼には声が聞こえない。
どれほど強くなったって届かない、傍に居させてくれない。

——————自分が強くなり、“戦姫”の称号を貰った理由は・・・・あの人を護りたかったからじゃきに・・・・
——————なのに・・・・。

あの人は———————。

「サリエルさんっ!自分も付いて行きた・・・・」
「ヴェロニカ・・・・」
「っ!」
駆け出そうとした彼女をギルティが止めた。そして、去っていく親友を鋭い目で睨み、その黒い背に言い放つ。
「サリエル、お前がどんだけ怨んで悪魔側に付こうがな、エルガは帰って来ねぇーんだよ。お前がどんだけ足掻いて、心を腐らせて牙をアーノルドへ向けようがな、エルガは喜ばねぇーんだよ。・・・・それを知ってて事を起こすたァーな、浅ましいぜ。」
「ギルティ・・・」
とラヅ。
やはり、振り返らない黒紫色の髪の青年にギルティは続けた。
「しかも、テメェーの身を誰よりも案じている女を泣かせるたァーな、男として最低だぜ。」
その言葉にヴェロニカは涙目でギルティを見た。
「強がって、男の様に毎日毎日飽きもせず振舞って・・・女らしさまで捨てて剣を持ち、多くの汚ねぇー血を浴び・・・・・・・こんな一途な女放って置いてテメェーは悠長に長旅に出んのか?」
ギルティが続ける中、ヘンリは魔法陣を完成させた。とそこへ、気絶させたアーノルドをアプフェルが連れて来る。
「おい、聞いてんのか?」
淡い水色の髪の毛の青年の問い掛けにサリエルは溜息をつき、口を開いた。
「俺ァ、そんな女なんか知らねぇーな。」
「っ!」
「行くぞ、滅界へ。」
とヘンリが言い、魔法陣の上に促す。
上に魔族側全員が乗ると魔法陣が輝き始めた。それをギルティは拳を握り締めて睨んだ。
とそこへ————————。
「魔王っ!!!!」
青年の雄叫びが響いた。
その声に全員が振り返る。
鋼の剣を掲げ、魔法書を持ち、鋼の爪を装備した————————勇者が、賢者が、武闘家が魔王目掛けて走ってきた。
「シャク!」
とラヅ。
シャク達はギルティ達と並ぶ。そこで、三人はノラマを見る。
「サリエルさんとノラマを返せ!」
とシャク。
そんな赤髪の青年を眺め、滅神王次男は薄く哂う。
「何者だ・・・貴様は?」
「勇者だ。・・・・魔を祓う、女神から選ばれた勇者だ。」
「っ!」
その言葉にヘンリは少し驚いた表情をしたが、すぐに緩む。
「ほぅ、貴様が女神が直々に選んだ勇者とやらか・・・・フン、アハハハハハハハっ!」
魔王の嘲笑うかの様な笑い声を聞き、シャクは眉根を寄せた。
「何が可笑しい!」
ヘンリは笑いを堪えると勇者に目を向けた。
「いや、少し考え過ぎていた自分に笑えたのだ。実に自分が愚かであったのだな・・・・・・・・まぁしかし、此方側にエウリアが居れば問題は無いのだよ。」
「何を言っている!」
勇者の怒声にヘンリは少し不機嫌な顔をし、応じた。
「貴様、俺に対して非常に失礼ではないのか?目の前に居る強敵と己自身のレベルをよく考えろ。」
「黙れ!魔王!」
ヘンリは眼鏡を押し上げると怒鳴り気味の声で言い放つ。
「俺は唯の魔王では無い。俺は滅神王次男のヘンリだ。」
「次男・・だと?」
とヒカルが驚愕する。
同じくレイアも驚く。
「次男って・・・雅か・・・」
驚く人間共を不適に哂って眺め答える。
「その雅かなのだ。俺の上には兄が居てな・・・滅神王長男のローレライと言うのだが、そいつは発言や行動は馬鹿だが、俺よりは強い。・・・・そして・・・」
とそこまで言い言葉を切ると、横に居る蛇を生やした少年を一瞥し、続けた。
「そして、俺の横に居る・・・貴様等愚かな人間どもが“ノラマ”と呼んでいたコイツが俺の弟・・・・滅神王三男のエウリアだ。」
「何っ!」
驚く勇者達を眺め、ヘンリは不気味な笑みを浮かべ続ける。
「・・・・まぁ、此処で貴様等を始末しても良いのだが、もう少し遊ばせてやろうではないか。精々、滅界まで死に物狂いで来ると良い。その時に相手してやる。」
魔王の言葉と同時に彼等の姿が次第に薄れていく。
シャク達は魔王達が居る魔法陣まで駆けたが遅かった。
彼等が辿り着いた頃には完全に村から消えていた。
残されたのは戦禍に飲み込まれている村と未だ生き残っている魔物達だけだった。


続く…。
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
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嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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