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5章

 
第5章
~血塗れのテキスト~


*人助け、荷物の配達、花の水遣り、町の掃除……とあらゆる仕事をしたシャク達。その為、真昼であった世界はもう夕方である。
汗をかいて気持ち悪い体を、ラフシュタット一番の宿屋アルベルゴで流す。そして、さっぱりし、部屋のふかふかベットに寝転ぶ。
「あぁ~すげぇー働いたぜ!!」
とシャクはベットの上で伸びをする。
「そうだねぇ~!クタクタだよ!」
ノアもベットの上に寝転がって言う。
そんな二人を椅子に座って眺めているヒカルは不満げな表情をしている。
——————もうこの世界で一日が終わろうとしている・・・だったら、現実世界に戻ったら約19時くらい・・・流石にやばいぜ・・・。
「どうしたんだ?ヒカル。何か言いたそうな顔してさ。」
シャクがきょとんとした顔でヒカルに問い掛けた。
「何か不満でもあるの?いっぱいお金稼いだのに。」
とノアもヒカルを見つめる。
「・・・呑気過ぎるんだよ・・・・シャク・・・・」
「は?」
ベットの上の二人は首を傾げる。
——————呑気過ぎる?・・・俺が?
「一体何を言ってるんだよ?」
「俺等は帰らなきゃいけねぇーだろうが・・・・」
ヒカルが小声で言う。
そこでシャクは閃いた。
——————すっかり忘れてた!此処は俺等の本当の世界じゃねぇーんだ!此処は異世界・・・現実世界じゃない!
「あ、あ、あ・・・そうだったな・・・」
「シャクちゃん、ヒカルちゃん・・・帰るの?」
「あ、いや・・・」
「バルコプエルトに行かないってこと?」
「い、いや、そうじゃなくて・・・」
聞いてくるノアにシャクは戸惑った。
——————異世界の人間には俺等の事を言っても良いって言ってたよな・・・ラー。・・・魔族は駄目って言ってたけど・・・。
「何かあるの?秘密?」
ノアはぐいぐい聞いてくる。
「えっと・・・・」
苦笑して言葉を紡ぐ事が出来ない勇者に苛立ったのか、魔法使いの青年が少し怒った様な口調でノアに言った。
「俺等は此処の世界の住人じゃないんだ。俺等は別世界から来た人間で、この世界と別世界を行き来してるんだ。だから、此処にずっと居る事が出来ない。」
「ヒカル!」
「良いんだよ・・・ラーは魔族には駄目って言ってただけで普通の人なら大丈夫だよ。」
「でもさ・・・!」
「此処とは違う別世界・・・・?」
ノアの目が次第に輝いて来る。
「別世界があるの?」
「あ、あぁそうなんだ・・・」
「凄いね!シャクちゃんとかヒカルちゃんって変人なんだ!凄いや!」
「変人・・・?」
「別世界か・・・・行ってみたいけど、やっぱりこの世界が一番なんだよね。」
ノアの発言にシャクとヒカルは意外そうな顔をした。
てっきり、彼の事だから‘行ってみたい!’とか‘連れてって!’とか言うらしかったが・・。
「自分が居る世界が一番なんだ。そこが本当の自分の居場所だからさ。」
「ノア・・・」
「でもでもさ、何でシャクちゃん達はこの世界に来たの?」
「何でって・・・」
「何か理由があるんでしょ?」
「ま、まぁ・・・」
「教えてよ!何か手伝いが出来るかもしれないからさ!」
ノアは笑顔を向けて言い放つと、聞く気満々でシャク達を見た。
シャクはヒカルを見た。当のヒカルは「知らねぇーよ」と言う風な顔をしてシャクを見返す。
勇者は軽い溜息をついて口を開く。
「・・・魔王をさ・・・倒さなきゃいけねぇーんだよ・・・女神に頼まれちゃってさ・・・」
「女神様に頼まれた・・・・?」
ノアは首を傾げる。
「そう。」
ノアは返事を聞いて、何かを思い出す風な表情をする。
そして、数分して口を開く。
「幼い頃にね、聞いた事があるよ・・・・女神様に何かを頼まれた人は“勇者”だって・・・もしかして・・・シャクちゃん達って勇者なの?」
「あぁ・・・」
「凄いや!!生きてて本物の勇者に会えるなんて!!しかも、一緒に居るよ!!」
ノアは飛び跳ねて、喜びを表した。まるで、有名人にでも会ったかの様にだ。
「おい!あんまし、俺等が女神の使いの勇者だって言いふらすなよ!」
とシャクが注意をする。
そんな勇者の発言にノアは口に両手を当てて頷いた。
「そ、そうだよね・・・魔族達にバレたら駄目だもんね・・・・ごめん・・」
「そうそう。」
「・・・・で、シャクちゃん達は一度、自分達の世界に戻りたいって言うんでしょ?」
とノア。
「あぁ、そうなんだ。」
「戻って良いよ。オイラは此処に居るからさ。」
「マジでか?」
「うん。」
「でもさ、マードレさんに・・・」
「もし、何かマードレさんに言われたら何か言い訳をしておくよ。」
ノアは微笑を浮かべた。
「ありがとう、ノア。」
「どういたしまして!・・・・あ、そうそう!お土産頼むよ!!」
陽気な手品師の言葉に苦笑しつつもシャクとヒカルは心底ノアに感謝した。そして、天使ラーから貰った、現実世界と異世界とを行き来する指輪——————‘天使の指輪’を翳して、帰りたい場所を想像する。
その瞬間、ノアの前からシャク達は消えた。

———————勇者が現れたんだ・・・・。それ程までに世界が危機に晒されている・・・。
ノアは真剣な表情をする。
———————あの爆発・・・三大陸の制圧・・・本格的に魔王が動き出しているんだね・・・。
拳を硬く握り締める。
———————ミーシア・・・。
手品師は最愛の妹であるミーシアの笑顔を思い浮かべ、彼女の無事を祈った。




荒廃。
破壊。
残酷。
粉々。
悪臭。
炎上。
悲鳴。
流血。
暗雲。
灰色。
雷鳴。
寒気。
悪夢。
絶望。

光の母親が家に帰っていない事を確認した灼達は、光の家から出て我が目を疑った。
灼は家路に着こうとしていたはずであるのに、我が目を疑う破目になってしまったのだ。
——————何で・・・俺等の世界が・・・破壊されているんだ・・・・!!
彼等の目の前に広がる光景は、今までの世界じゃない。

これは違う。

立ち並んでいたビルは破壊され、道路には皹が入り、硝子は地面に飛び散り、炎は舞を披露している。そして、何よりも先に灼達の目に飛び込んできたのは———————。
——————何で・・・魔物が居るんだ!!!
今までに見た事も無い大勢の魔物達が現実世界を徘徊しているのだ。
「何で・・・魔物が!!」
人々の悲鳴が上がり、地面に倒れていく。赤ん坊の声まで聞こえてくる。何かを食べる音まで聞こえてくる。時折吹く風には血の臭いさえも混じっている。
灼と光はその場に立ち尽くしていた。
戦おうにも戦えない。現実世界に戻れば、装備していた武器や防具は外れてしまうからだ。
制服姿の灼達は呆然とするしか方法が無かった。
「な、何でどうやって・・・魔族達が・・・俺等の世界を嗅ぎつけたんだよ・・・」
光は声を震わせながら現状を飲み込めないで呟いた。
「俺等は何も言っていないはずだぜ・・・・それに・・・魔王には遠方で会っただけぜ?何で・・・」
「もしかして・・・・気配で分かったって言うのかよ・・・・」
「!」
灼の言葉に光は頭の中が真っ白になった。
「てか・・何が何だかさっぱり分かんねぇーよ・・・・・」
赤髪の青年は現状を飲み込めずに居た。

しかし、一つだけ・・・・一つだけ分かる事がある。

お仕舞いだ・・・・。
何もかもが消えてしまう。

と言う事。

その時、急に光が気が狂ったかの様に叫び始めた。
「母さんは!!俺の母さんや父さんは!!」
そこで灼も気付いた。
——————母さん!父さん!
「母さん!父さん!」
光は叫びながら母親を捜そうと足を進める。そんな彼を灼は辛うじて保っている正気を奮い起こして止めた。
「光!今は止せ!危険だ!」
「放せよ!!母さんを捜さないと!!」
「今は駄目だって!武器がねぇーんだ!戦えるワケがねぇーだろ!」
「五月蠅い!!そんなんどうだって良い!!」
「良くねぇーよ!」
揉めている青年達に気付いたのか遠方から魔物達が向かって来る。素早く灼はそれに気付き、何とか光を引っ張り、建物の陰に隠れた。そして、やり過ごす。
——————俺だって・・・母さんや父さんを捜したいよ・・・でも・・・無理なんだよ!
戦争の如く荒れた世界は悲惨だった。
魔物達はゲームをしているかの様に人間達を追い掛け回し、走れなくなった奴等を食い荒らす。骨までしゃぶり、血も飲み干す。
灼と光は血が出る程唇を強く噛んで逃げ惑う人間達を物陰から見る。

酷過ぎる。

灼は目を硬く閉じて俯いた。

こんな光景・・・見たくなんかねぇーよ・・・・。


その時だった。
急に光が硬直した。灼はそんな親友が見る視線の先を見た。

驚愕。

何故なら、魔物達から逃げる中に、光の母親が混じっていたからだった。
「母さんっ!」
光は咄嗟に叫んだ。
母親のすぐ背後には巨大な斧を掲げた大型の獣型の魔物。
「母さんっ!」
光は思わず駆け出そうとした。しかし、灼に止められてしまう。
「光!」
「放せ!母さんを助けないと!」
光は必死に灼の手を振り払おうともがく。しかし、彼は絶対に放さない。
「止めろ!」
「母さんが!!」
「分かってる!!!」
灼の声は震えていた。恐怖と悲しみで。

大切な人が死ぬ。
目の前で。

聞こえない。
誰が止めようが。
感じない。
誰が足を折ろうが、斬ろうが。

光は今、そんな状況に陥っている。
助けないといけないと言う感情に光は支配されている。自分の事など何も思っていない。
必死に抵抗する光を灼は放さなかった。
この手を放したら光が光で無くなってしまいそうだったからだ。

その時。

時が止まった。
血しぶきも止まる。
涙も止まる。
呼吸さえも止まる。

今、目の前で何が起きた?

どさりと前のめりに倒れた。
何かを大切そうに抱えた人間が。
群がる。
何かを大切そうに抱えた人間に。
骨を折る。肉を食らう。血を吸う。
何かを大切そうに抱えた人間の。

彼女を犠牲にして共に逃げていた人間達は去って行った。
「助かった」とでも思っているのだろう。

光は声を上げることが叶わないまま、地面に両膝を突き立てて虚ろな目を見開く。
灼も驚愕のあまり声が出ない。
代わりに吐き気に襲われる。
光はその場に咳き込む。
彼も吐き気に襲われているのだろう。
「光!」
灼は光に呼び掛ける。
しかし、彼は力尽きたかの如くその場に倒れた。


*あまりの衝撃に気絶した光を灼はその場に残すと、光の母親を食い荒らし、去って行った残骸に歩み寄った。頭の中は真っ白だった。唯、光の為にも何か遺品を見つけ出したい一身だった。
灼は彼女が大切に抱えていた物を拾い上げた。
彼が拾い上げた物は—————————。
光の母親の血で血塗れになったテキストだった。
「こ、これ・・・・」
このテキストは、彼等が異世界に飛び立つ際に言い訳として光が母親に買って来てと頼んだ品だった。
自分の母親でもないのに、目元が熱くなる。しかし、涙は流さない。
灼は血塗られたテキストを抱えると、光の許へ戻った。
そっと、傍にテキストを置く。
そして、内心、
———————こんなんじゃ・・・家に帰ったって俺の母さんは・・・・。
と思っていた時だった。
女の子の悲鳴が聞こえた。それも、聞き覚えのある声だ。
灼ははっとなって悲鳴の方を見た。
そこには、両親を目の前で殺され、その場で悲鳴を上げている淡い水色の髪の毛をした女子と何か光る人物が居た。
「氷山とラーっ!!」
灼は小さく叫んだ。
氷山はその場に座り込むと、先程の光の様な表情をした。そんな彼女を護る様にラーがあたゆる魔法で魔物を退ける。
灼は周囲を見回した。
何か魔物の気を引くものがあれば良いのだが・・・。
「!」
灼は近くに小瓶があるのを見つけた。
——————これで気を引いて、どうにか氷山とラーをこっちに連れて来ねぇーと・・・・!

小瓶が宙を舞い、ラー達から遠く離れた場所に落ちて音を立てた。
忽ち、魔物達はその方向を見つめ、奇声を上げて駆けて行く。そんな間抜けな魔物どもを見て、灼は叫ぶ。
「氷山!ラー!こっちに来い!!」
青年の声に二人は気付き、すぐさま駆けて来た。



いつまでも魔物達の制圧は止まなかった。
灼、冷愛、気絶した光、天使ラーは建物の物陰に身を潜めていた。
そこで、顔を真っ青にした冷愛が震えながら口を開いた。
「い、一体・・・ど、どうなってるの・・・?何が起きたの?・・・世界は又戦争になるの?ねぇ?」
「氷山・・・・」
灼は気の毒そうな顔をして口篭った。
彼女にどう説明して良いか分からないからだ。
そんな勇者を見て、ラーが言った。
“勇者様、冷愛さんにはもう既に私から全てを話しました。”
「ラーが?」
“はい・・・。光さんと喧嘩染みた感じになった後、私、この世界に来て冷愛さんに愚痴を言っていたんです。・・・だから・・・彼女はもう知っています・・・。”
「そうか・・・ありがとう・・・」
“いいえ・・・”
ラーは泣きそうな表情をし、黙り込んだ。
「あたし達・・・どうなるの?・・・これから先・・・何が・・・」
冷愛はパニックに陥ってしまったらしく未だそんな事を言っている。
「氷山・・・正気に戻ってくれ・・・光がこんなんでお前までそんなんだったら・・俺・・」
“光さんはどうなされたんですか?”
ラーが心配そうな顔で灼に問い掛けた。
灼はそんな天使に全てを話した。
それを聞いてラーは益々顔色を悪くした。
“そんな・・・酷い事を・・・”
「あの・・黒い男が悪いのよ!」
急に冷愛がそんな事を言い出した。灼の視線が彼女に向く。
「黒い・・・男・・・?」
「あの黒い男が来てからこんな・・・こんな・・・」
そこまで言うと冷愛は泣き出した。
「何だ・・・そいつ・・?」
と灼。
“この世界に魔物達を引き連れてやって来た男です。黒い甲冑に身を包み、暗黒の剣を振り回し、魔物達を指揮し人間達を殺していった人物です。”
「そんな奴が・・・」
“恐らく、魔王の手下でしょう。”
ラーの言葉に灼は唇を噛む。
「でも、何で魔王達が此処を攻めに来るんだよ。」
“それはこっちの台詞です!勇者様達が何かを・・”
「言ってねぇーよ!俺等は何も言ってねぇーよ・・・・」
二人は黙った。
確かに、勇者だとばれる様な派手な事はしていなし、言ってもいない。
灼は今までの出来事を思い返してみた。
異世界、スピアッジャの浜町、漁、魔物達との初戦闘・・・・。
初戦闘・・?
灼はそこで何かに引っ掛かった。
そう言えば、あの戦闘の際、急に魔物達は逃げて行った。
それも、ラーが魔法を唱えようとして発動しなかった時だった。発動もしていないのに魔物達は逃げて行った。そして、魔物達にはラーが見えている様な感じだった!
「あっ!」
突然、灼が声を上げた。
泣いていた冷愛とラーは灼を見る。
「何よ・・・」
と冷愛。
「何で魔王軍にバレたか・・・分かった様な気がするぜ・・・」
“何ですか?”
「テメェーだよ、ラー。」
“私ですかっ!?”
「そうだよ。あん時さ、スピアッジャの浜町から漁に出掛けた時、ラーが魔法を・・・」
“!”
ラーは灼の言葉を聞き終わらない間に顔を真っ青にした。
“ま、雅か・・・・いえ、そう言えば・・・魔物や魔王達には天使や女神様の姿は見えるんでした・・・!”
「馬鹿・・・か・・・」
灼は今以上に絶望を感じ、項垂れた。
最悪の状況だ。
いや、最悪の天使を遣いに遣したのだと灼は絶望を感じた。
“すみません!!てか、責任は絶対に取ります!!”
「いや、取れねぇーだろ・・・俺等の世界を元通りに出来るワケじゃねェーし・・・」
“出来ます!”
「はっ!?」
ラーの言葉に灼と冷愛は同時に叫んだ。
“出来ます!てか、女神様を無事に救い出せたら、この世界を元に戻してもらえます!・・・多分・・・”
「死んだ人間も生き返る事も出来んのか!?」
“多分・・・いや、はい!勿論!”
「それ信じて良いの!?」
と冷愛。
“は、はい・・・はい!”
「光の母さんも生き返るんだな?」
“はい!”
灼は多少希望を取り戻した。少しだけ、安堵の表情へと変わる。
「良かった・・・」
冷愛は再び涙を流すと言った。
“だから、一刻も早く女神様を助け出さなくては!!”
「あぁ。」
拳を握り絞めて返事をする灼を見て、涙目で冷愛が問う。
「雷塔君はどうするの?」
「異世界に連れて戻る。」
「大丈夫なの?」
「平気だって。ラーが言った事を説明すれば、激怒して元気になるさ。」
「・・・・そう。なら・・・行く?異世界に。」
「あぁ・・・って、行くの!?お前も!」
「当たり前よ!だって、天使が見える人間には何か運命があるんでしょ?だったら、あたしもその一人よ。」
冷愛は涙目を瞬かせて言うと例の指輪を見せた。
「お前、それ!」
「ラーから貰ったの。これで異世界に行けるんでしょ?」
「そ、そうだけど・・・約束と違うじゃんか・・・」
「で、どうやって行くの?てか、あたしより先に異世界に行って強くなったって感じなんだから、あの黒騎士?暗黒騎士を倒せそうじゃない?」
「無理無理無理無理無理無理無理無理!!!絶対ぇ無理!死ぬ!」
「何よ、勇者のくせに弱いのね。」
「いや、誰だって最初は弱いよ!」
「ラー、どうやって行くの?」
「おい!話飛んだぞ!」
“冷愛さんは未だ異世界に行った事が無くて、イメージが出来ないので・・・灼さんに触れて行って下さい。”
とラー。
「イメージで行くんだ。何か・・・変わってるわね。」
冷愛の言葉に灼は盛大な溜息をついた。
ここから先、五月蠅い奴が旅に同行してくると思うと嫌気が差して来ると言うものだ。
そして、光の腕を自分の肩に回し血塗れのテキストを持つ。
「早いとこ、魔王から女神を助け出して、俺等の世界を元に戻してもらおうぜ。」
「そうね。」
「だから、ラー、これからの案内、頼むぞ。」
“はい。”
「でさ、あの黒騎士は放っておくわけ?」
と冷愛。
「あぁ。今の俺等じゃ勝てねぇ。てか、この状況で会いたくねぇーよ。」
灼は無愛想に言うと指輪を見つめた。
「よし、行くか・・・」
勇者が促し掛けたその時だった。
爆発音が響いた。
そして、何かが此方に向かって歩いて来る音が聞こえる。
「な、何・・・・?」
冷愛が怯えて言う。
灼とラーも身構える。
何かが向かって来る。
「不吉な赤に・・・水色・・・・金に・・白・・・・・」
若い男の声がする。
その声に冷愛とラーの顔が引き攣った。
「我が主の命令において確実に排除せねばならない汚物・・・・」
男は言うと、剣を鞘から抜き出したのだろう、音がする。
灼はもう終わりだと言う様に目を硬く閉じた。
その時。
淡い輝きが灼達三人を包み込んだ。
「な、何だ!」
“勇者様・・・貴方達は絶対に死んではいけない存在です。ですから、早く異世界に・・”
「ラーっ!」
この輝きは天使が発した光であった。これが天使の瞬時の決断だ。
“私の力で勇者様達を・・・”
「何言ってんだよ!」
“どうか、女神様を助け出して下さい!”
「おい!」
ラーは少し微笑むと強烈な光を発した。
その光のせいで男の足が止まる。
「くっ!」
“勇者様達を異世界に!!”
「ラーっ!」
灼達は聖なる輝き包まれて破壊された現実世界から消えた。

白い空間の中を彷徨う。
微妙な意識で思う。

必ず・・・全てを取り戻してみせる・・・。
 

6章へ続く。
 

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1990-01-06 : 【異世界のイストワールⅠ】 : コメント : 0 :
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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【勇者の特権を取り戻す為に俺は魔王を復活させ、無限ループを繰り返す。】


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