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異世界のイストワール  第6章~愛らしいとメイドとアンニュイ~  その3

 
~前回のあらすじ~
バルコプエルトへ行ったのは良いのだが、シャク達は呆気無く制圧された大陸へは連れて行く事は出来ないと言われてしまった。しかし、バルコプエルトの中年船員はナーヴェポルトの船ならば若しかすれば乗せて行ってくれるのではないかと薦める。それに従ってシャク達一行はナーヴェポルトに着いたのだが・・・又しても駄目だと言われてしまった。仕方無く、一行はナーヴェポルトの宿屋で一泊する事にしたのであった。

以下は続きです。
 

 
*朝。鴎の声が聞こえる。しかし、本当の鴎なのか疑いが芽生えてくるのは気のせいか。
シャク達はナーヴェポルトの宿屋から出た。そして、フォールドに立っている。
吹き通っていく風が心地良い。
「・・・で、どうすんの?」
とシャク。
「知らないわよ。勇者なんでしょ?アンタが何とかすれば良いじゃないの。」
レイアは呆れた表情で呟いた。
ヒカルも同感だと言うばかりに目を半眼にしている。
「どうすんの?って、もうあの大陸には今のところ行けないんだから、ウチと行動を共にするのが宜しいと思うよ。」
ノアが笑顔で言った。
「あのな・・・」
「てか、此処から近いインパラーレでさ、転移魔法とか習得すれば良いんじゃないかな?」
「テンイマホウ・・?」
「そうさ。どこにでも移動できる魔法さ。インパラーレなら習得できるんじゃない?ほら、ヒカルちゃん、魔法使いのフォースでしょ?」
「なるほど・・・」
とシャクとレイア。
転移魔法を唱える事が出来ればどこにでも移動が可能になるわけだ。
「でもね、一度訪れたり、見たこと無いと転移できないから、インパラーレで写真を見せてもらうとかしないと駄目だけどね。」
転移魔法を唱える際に気をつけておきたいのは、詠唱者が一度その地を訪れた事があるか或いは見たことあるかである。でなければ、移動先のイメージが掴めず、テレポ出来ないのである。
「でも、行ってみる価値はあるな。」
シャクも同意する。
「転移魔法の方が船より早いもんね!」
とレイア。
「そうそう!」
「ヒカル、頑張ってくれよ!」
シャクはヒカルの肩に手を置いて言った。
「それじゃぁ、インパラーレにレッっゴー!!!」
手品師の元気な声がフィールドに響いた。



現実世界から帰還した暗黒騎士。彼は滅神王の間に赴く。
「勇者の世界は完璧に堕としました。」
跪き、伝える。
玉座に座っているローレライは暗黒騎士を見つめて笑う。
「そう。それはご苦労さん。」
「で、勇者は居たか?」
と傍らで大悪魔神官兄カルコスが問う。
「はい。ですが、殺し損ないました。」
「何だと!」
「すみません。」
「ちっ・・・」
カルコスは舌打ちをして唇を噛んだ。そんな大悪魔神官にローレライは笑い掛ける。
「そんなに怒らなくても良いじゃないの。」
「怒るわっ!勇者だぞ!勇者が迫って来るんだぞ!」
「はいはい。」
「少しは危機感持てよっ!」
「はいはい。持ってますとも。」
「絶対ェ、持ってねぇーだろ!」
そんな二人の遣り取りを見ていた暗黒騎士が口を開く。
「ローレライ様、カルコス様・・・もう一度チャンスを下さいませんか?必ずや次は勇者の首を持って帰ってみせます。」
「チャンスか・・・あぁ、良い・・」
「私は休んだ方が良いと思うのよ。疲れたでしょ?」
とローレライがカルコスの返答を遮って言葉を発した。
「おい!俺が返答してただろ!」
「あら、ごめんなさい。でもね、休んで欲しいのよ。あんまり働き過ぎたら過労死しちゃうでしょ?」
「あのな・・・魔物や下部ってモンはな、魔王の為に働いてこそ・・・」
「だから、カーツちゃんだっけ?休んでちょうだい。貴方がしっかり休んだら又お仕事をあげるから。」
「は、はい・・・」
「お利口さん。」
ローレライは笑顔で言うと玉座から立ち上がった。
「どこに行くんだ!仕事はたんまりあるんだぞ!」
「研究室よ。キルちゃんの研究を見てみたいから。」
「あんなの放っておけよ!」
「カルトス君も来てちょうだい。あの子の才能は凄いから!」
滅神王兄ローレライは大悪魔神官と暗黒騎士を残して去って行った。



昼頃に魔法の町インパラーレに辿り着いた。
石畳を進み、綺麗な花々が咲き乱れる道を歩く。その先には多くの店が並んでいた。その町から巨大な塔が見える。
「此処がインパラーレだよ!凄い綺麗でしょ?」
とノアが言う。
確かに綺麗な街並みだ。
そして、此処が魔法の町であることを証明するかの様に行き交う人々は魔道士用のローブを纏っていた。中には戦士や武闘家など御馴染みのフォースの人間も居た。恐らく旅人であろう。
「あそこに町のマップが書いてある大きい看板があるから見に行こうよ!」
ノアの促しにシャク達は看板を見に行った。
武器屋、防具屋、装飾品の店、道具屋、宿屋、魔法書の店…様々な店が並んでいた。
「魔法書の店だってさ。これ、ヒカルに良い店じゃね?」
シャクが言う。
「確かに!行ってみない?」
レイアも興奮して誘う。
その時だった、背後に足音がした。
「全く、ミーシアさんどこに行ったのかな?」
若い女の声がする。
「又、迷子にでもなってんじゃねぇーの?俺ァ、知らねぇーよ。」
だるそうな男の声もする。
シャク達は振り返った。いや、シャク達よりも逸早く振り向いたのはノアだった。
「チルノちゃんにギルちゃんじゃん!!」
とノアが叫ぶ。
「あ、ノア君。」
チルノと呼ばれた黒髪を一つに結んで背中に流し、メイド服を着て色々何かが入ったバスケットを持った女性が微笑んだ。
「あぁ~あ・・兄馬鹿が居やがったぜ。」
と真っ青の着物を着た青目で淡い水色の髪の男。恐らく二人共18歳くらいであろう。そして、この男、かなり強いのだろう。腰に鉄の刀を差している。
「兄馬鹿だなんて失礼だな。てか、愛らしいミーシアは?」
「それが、一緒に居たんだけど、どこかに行っちゃって・・・・」
「帰ろうにもあいつが居ねぇーと帰れないんだよ。迷惑してんだよ。ちったァ、注意しろや。兄馬鹿。」
「ミーシア、どこに行ったんだよ・・・」
「ノア・・・この人達って・・」
シャクがノアに問い掛ける。はっとなってノアは紹介する。
「えっと、このメイドさんがニルバーナの村長、エルガちゃんの家の召使の人で名前はチルノ・ハイイーストちゃんで・・・こっちがギルティ・ヴァーイスデモンちゃん。エルガちゃん家の居候ちゃんだよ。」
「おい!何勝手に作ってやがんだ!」
「本当だもん。」
「あのな!」
「申し遅れました、俺はシャクです。こっちがヒカル。」
「あたしはレイア。」
チルノとギルティは三人を見た。
「兄馬鹿の連れか?」
「連れって言うか仲間だよ。」
「てか、何で戻って来たんだ?おめぇ、手品師になるとかどうとかほざいてたよな?」
「なったさ。」
ノアは言うと一回転してみせた。
「じゃぁ、ナイフ投げとかやって!やって!」
チルノが手を叩いて連呼する。
「うん、良いよ。」
と手品師はナイフを腰のベルトから抜いた。その時だった。
「ごめんなさぁ~い!」
と可愛らしい声がした。
その声にノアはナイフを取り出すのを止めて声の方へ駆けて行った。
「ミーシア!!」
「ノア兄さん!」
ノアはミーシアと呼んだ少女——————うねった綺麗な茶髪、輝くエメラルドグリーンの目、長い睫毛、白いブラウスと水色のレースのワンピースを纏った——————を抱きしめた。
「会いたかったぜ。」
「私もよ。ノア兄さんったら、手品師になるって出て行くんだもん。」
「ごめんよ。怪我とか病気とかしてないか?御飯はちゃんと食べてたか?」
「うん。ノア兄さんこそちゃんと食べてたの?怪我とか病気とかしてないの?」
「俺はミーシアが元気ならそれで良い。」
シャク達はノアの言葉を聞いて驚いた。
今までのノアと違う。
どこか男らしい。
それに一人称がコロコロ変わっていたのにこの少女の前では“俺”になっている。
ノアは少女を解放するとシャク達に向き直った。
「この子が俺の妹ミーシアだ。」
「あ、ど、どうも・・シャクです。」
「レイアよ。」
「ヒカル・・だ・・」
「宜しく。今までノア兄さんと旅をしていらしたの?」
とミーシア。
「あ、まぁ・・・」
「ノア兄さん、迷惑かけていませんでしたか?」
「あ、そりゃ・・」
シャクの返事を聞かずにミーシアはチルノ達に向き直った。
「チルノさん、ギルティさん、ごめんなさい。ついて行ってたんだけど、迷ちゃって・・・」
「良いよ。」
チルノが微笑む。
「これからニルバーナに帰るのか?」
とノア。
「うん。傷を癒すポーションを買いに来ただけだから。」
妹の言葉を聞いてノアの目付きが変わった。
「ポーション・・?雅か・・・あの男のじゃねぇーよな?」
「あの男?」
「ヒルダの事だよ。」
「うん。ヒルダさんとオルバさんの。二人共熱心に村を護ってくれてるから。」
「あんな奴等にポーションなんて買わなくて良いって!何回言えば分かるんだよ!」
妹想いの兄にギルティは呆れた。
「良いから、村に帰りてぇーんだけど。そのヒルオル争いは村に帰ってからにしてくれる?」
「・・・」
場が悪くなったのを防ごうと思ったのかチルノが口を開く。
「シャクさん達もニルバーナに来ませんか?」
「あ、いや・・・」
シャクはヒカルとレイアを見た。
二人は何とも言えない顔をしていた。
このインパラーレに来た目的は転移魔法の習得だ。だから、ノア達とニルバーナへは行けない。
「無理ですか?」
「あ、いや・・・・検討するんで・・・町の入り口で待ってて下さい。」
苦笑しながら言うシャクの言葉に四人は先に去って行った。
彼等を見送ってレイアが口を開いた。
「ねぇ、行ってみない?あたし、すっごく行きたいんだけど!」
「氷山、あのな・・・」
「その氷山とか止めてくんない?レイアで良いわよ。」
「じゃぁ、レイア。俺等の目的は転移魔法を習得することだぞ。遊びに来たんじゃない。」
「分かってるわよ。だったら、あの人達にヒカルが転移魔法を習得するまで待ってもらえば良いじゃない。」
「それは迷惑だろ。」
「転移魔法はかなり習得するのに時間が掛かる様な気がする・・・・・」
ヒカルが呟く。
「ヒカル・・分かんのか?」
「いや、転移魔法ってぐらいだから難易度は高いと思う。」
「そっか・・・」
「でも、あの人達について行かなきゃ道が分かんなくなりそうだもん。」
「じゃぁ、レイア一人で付いて行けば?俺等は後から行くからさ。」
「嫌よ!」
「何で?」
「・・・そ、それは・・・その・・・・」
レイアは口篭る。そんな彼女を見てヒカルが再び口を開く。
「シャクとレイアはさきに行ってて良いよ。俺、ちょっとやりたい事があるから・・・」
「やりたい事?」
シャクの問い掛けにヒカルは顔を少し赤くして二人を押し、
「い、良いだろっ!さっさと行けよ!後でな!」
とヒカルは言った。
「じゃ、じゃぁ・・・行くぜ?マジで良いのか?」
「あぁ、良いって!町の人に聞いて行くから!」
二人は顔を見合わせて頷いた。
「じゃぁ、後でな。」
「あぁ。」
疑問を顔に浮かべながら去って行く二人を眺めてヒカルは町の奥へと進んで行った。



ヒカルがインパラーレに残る事を伝え、ごつごつとした山が並ぶ、ほっそりとした道を歩く6人。魔物が襲い掛かって来れば一たまりも無い道である。それ故、ニルバーナの村へ向かう商人や旅人はこの道を避けて、別ルートを通るらしいとされている。だが、ノア曰く、この道が近道らしい。
ニルバーナの村は山々に囲まれた少し大きな村である。溶岩の欠片が沢山手に入れる事が出来る大きな火山—————ニルバーナ火山へ続く洞窟がある唯一の村でもある。
「この道を通ると、約30分くらいで着くんだぜ。早いだろ?」
とノア。
「そ、そうなんだ・・・」
シャクとレイアは一変したノアを見て苦笑した。
ニルバーナの村長エルガのメイドのチルノ曰く、妹のミーシアが居ると一人称も‘俺’に変わり、性格や口調が変わるらしいのだ。
インパラーレから歩き始めて早15分。此処まで魔物に襲われて居ないと思っていた矢先、シャク達は魔物の群れに襲われた。
鶏の雄を直立ニ歩行させ、甲冑を装備させた魔物——————チキンナイト。
バルコプエルトへ行く途中に襲って来たアラクを白骨化させた蜘蛛型の魔物—————ボーンアラク。
岩や石が集まって生まれた魔物—————ゴーレム。
この三体が襲い掛かって来た。
「わぁ~、魔物だぁ!!」
チルノが目を輝かせて叫ぶ。
「えぇ!?チルノさん!?」
シャクとレイアは驚愕する。
そんな彼等を無視し、ノアは妹を庇う様に魔物の前に立ちはだかり、ナイフを構える。
一方、ギルティは大欠伸をして頭を掻いている。
チキンナイトが疾風の如く剣を構えて、一番弱いと判断したチルノに襲い掛かって来た。しかし、シャクが咄嗟の判断で彼女を鉄の盾で庇って攻撃を防ぐ。
「わぁっ!」
「チルノさん、大丈夫ですか!」
とシャク。
「大丈夫。」
そして、ボーンアラクに向かってレイアが鉄鋼鉤を振り翳す。骨であるだけに攻撃が通り難い。
ノアはナイフをチキンナイトに投げる。しかし、甲冑を装備している為軽い音を立ててナイフが地面に落ちる。
「っ!」
「ノア兄さん!」
「全く、何だ?急に襲いかかって来やがって!こっちはそんな暇はねぇーんだよ。コノヤロー!」
ギルティは重い岩の腕を振り上げて攻撃してきたゴーレムの攻撃を回避し、毒突く。そして、腰に差していた鉄の刀を握りゴーレムを斬った。瞬時にゴーレムの片腕が地面にどさりと大きな音を立てて落ちる。
「ギルティ、強い!!!」
チルノが拍手をして叫ぶ。
チキンナイトが奇声を上げた。忽ち、新たな魔物が数匹増える。
「仲間呼びか!」
ノアが舌打ちをする。シャクもレイアも焦りを感じる。
「あぁ、面倒だな!俺ァ、しつこい奴は嫌いだぜ!」
ギルティは言うなり、鉄の刀を構えて魔物達を一掃する。ノアも負けずとライトウィップやナイフで攻撃を食らわす。シャクは力を溜め、雄叫びを上げて魔物の群れへと突っ込んで行った。

仲間呼びをするチキンナイトを撃破し、ボーンアラクを粉砕し、ゴーレムを分解。
何度か仲間呼びをされて、戦闘が長引いたものの、何とか倒すことができた。
襲い掛かって来た魔物の残骸を見て、チルノが笑う。
「凄い!流石はギルティだ!わぁ~・・・本当に凄い!」
ノアはナイフを拾い、腰のベルトに差し、ミーシアの方へ駆け寄った。
「ミーシア、怪我は無いか!?」
「うん、ノア兄さんのおかげで怪我なんてしないわ。」
「良かった・・・」
そんな兄妹を見てレイアが言う。
「妹想いの良いお兄さんじゃない。」
「ま、まぁな・・・」
シャクは肩で息をしながら答えた。
——————でも、此処までエカレートすると・・・ちょっと引くな・・・。
「でもまぁ、前よりは強くなったんだな、魔物も。」
淡い水色髪の気だるい男が呟いた。
「でも、ギルティの方が強いよ!」
とチルノ。
誰もが口を揃えて言う。
魔物が強くなっていると。
シャクは倒した魔物の死体を一瞥した。
今回の戦闘で勝てたのはギルティやノアが居たからであった。
今のシャク達だけでは到底倒せないだろう。
未熟な勇者は悔しさに唇を噛んだ。そんな彼に14歳程の少女が話し掛ける。
「見て下さい、シャクさん、レイアさん。」
ミーシアが前方を指差した。
二人は彼女の指の先を目で追う。
「あそこに大きな火山が見えるでしょ?あれがニルバーナの村の目印なの。」
「へぇ~・・・」
「もう少しでニルバーナに着くわ。」
「ミーシア、もしかして疲れたのか?」
ノアが心配そうに妹に問う。
そんな心配性な兄にミーシアは首を横に振る。
「ううん、平気よ。」
「疲れたんだったら、すぐ俺に言えよ。休憩するからさ。」
「うん、ありがとう。」
そうこうする間に昼を大分過ぎていたことに気付く。太陽が満面の笑みを浮かべて笑っている。

その後、シャク達は魔物達との戦闘を繰り返し、漸くニルバーナへと辿り着いたのであった。


続く…。
 

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2014-11-19 : 【異世界のイストワールⅠ】 : コメント : 0 :
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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【勇者の特権を取り戻す為に俺は魔王を復活させ、無限ループを繰り返す。】


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