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異世界のイストワール  第13章~集結~  その2

※字抜けや字間違いしているかもしれませんが、許して下さい。


~前回のあらすじ~
シャク達から全てを聞かされ、何とか正気に戻ったサリエル。父エルガとの再会に涙を流す彼であったが、やはり別れの時がやって来た。エルガとの最後の会話をした後、サリエルは己のやるべき事を見つけた。それは———————。


以下は続きです。


*——————信じてくれる人が居る。
ヒカルの翳した手から大量の輝きが溢れ出した。癒しの魔力を孕んだ光が冷え切ったミーシアの体全体に降り注ぐ。それと同時に彼女の顔に赤みが差し、体温が戻る。生前のミーシアへと光が導く。そんな奇跡染みた光景をヒルダとオルバは目を見開いて眺めていた。
「し、信じられねぇ・・・!」
ヒルダは光の眩さに目を細める。
次第に彼女の胸の上下運動が再開し始めた。そして、ミーシアの目蓋がゆっくりと開かれる。
「ミーシアっ!!」
ヒルダが叫んだ。
その声にミーシアの目が次第に見開かれる。
「ヒルダ・・・・さん・・・・」
と呟いき、はっと目を開く。
そして、勢い良く身を起こす。
「ヒルダさんっ!」
僧侶は叫ぶとヒルダの首に腕を回し、抱きついた。当の彼はか細い彼女の背中に手を回す。
「ヒルダさんっ!!」
ミーシアは涙声で再び愛する青年の名前を叫ぶ。
そんな彼等を肩を竦めて眺め、オルバが言い放った。
「やれやれ、お熱い事で・・・・つーか、ヒカルに先ずは礼を言えよなァ。」
その言葉でミーシアがヒルダから離れ、ヒカルの方を見た。
そして———————。
「ヒカルさんが・・・私を・・・・?」
当のヒカルは額に浮かんだ汗を拭い、苦笑した。
「い、いや・・・礼には及ばないですよ・・・」
「でも・・・ヒカルさんは魔法使いなのに・・・どうして蘇生魔法を・・・?」
とミーシアが不思議そうに言った。
「僧侶であっても蘇生魔法は上級の魔法です。・・・それなのに・・・どうして・・・?」
それを聞き、オルバが応じた。
「そりゃァ、必死になってヒカルが詠唱したんだよ。ヒルダさんがビービー泣くもんだからさ。」
「おい!」
とヒルダが怒鳴る。
「ヒルダさん・・・が・・・私の為に・・・涙を・・・?」
「そーそー!“ミーシアっ!”っつって泣き叫んでたんだぜ!超ウケだよなァ~!」
オルバがけたけた笑い腹を押さえる。
そんな生意気な部下にヒルダは青筋を立てて掴み掛かる様に怒鳴った。
「一々五月蠅ぇーんだよ!!普通は仲間が死んだら誰だってそうなるだろうがっ!!」
「へいへい~」
栗色の髪の青年は適当に流す。
ニルバーナの自警団達を眺め、ミーシアはくすりと笑う。ヒカルは肩を竦めて盛大な溜息をついた。しかし、顔が緩む。
———————俺も少しは役に立つ事が出来たな・・・・。
先刻まで怒鳴っていたヒルダであったが普段の鋭い双眸を光らせると口を開いた。
「・・・・とりあえず、俺は大丈夫だ。シャク達と合流する事は出来る。」
そこまで言うと彼はミーシアに視線を向ける。
「ミーシアがどうだかは知んねぇーがな。」
「私は平気です!!ほら、この通り・・・」
飛び跳ねようとした少女であったがふらつく。ヒルダはそんな彼女を呆れた表情で支えながら言う。
「駄目じゃねぇーか。」
「ヘ、平気ですよ!」
強がる僧侶を見てオルバが溜息交じりに発言する。
「シャク達が此処へ来るまで待機って事っすかねぇ~?」
「あァ。無駄に動いて又魔物と遭遇したりでもしたら堪ったもんじゃねぇーぜ。」
ヒカルも頷き、病み上がりのミーシアへ顔を向けた。
「ヒルダさんの言う通りですよ。シャク達が来るまで一先ず休もう。」
仕方無くこくりと頷く彼女を見つめ、ヒカルは続けた。
「シャク達を待つ間・・・・・・ミーシアさん、俺に回復魔法や保護魔法を教えて下さい。」
魔法使いの唐突な言葉に僧侶は少し驚いたが、微笑んで頷く。
「はい!魔法使い・・・じゃくて、賢者様!」
「け、賢者?」
とヒカルが問い返す。
ヒルダやオルバも眉根を寄せる。
「賢者って・・・上級フォースとしての賢者か?」
とオルバ。
「はい。魔法使いであって蘇生魔法を唱える事が出来る僧侶の魔力の流れを掴む事が出来たのならば、ヒカルさんは魔法使いから賢者への道が開かれたに違いありませんわ。」
そこまで言うと彼女はヒカルが纏っている司祭のローブの胸元に付いているバッチを指差した。
「ほら、賢者になった証があるでしょう?」
ヒカルは己のバッチを眺めた。
それは確かに色が変わっていた。
当初、ラフシュタットの町で魔法使いになった彼の胸元に付いたバッチの色は紫色だった。しかし、今は澄んだ青色に変わっている。
「今なら感じるはずです。・・・・今までよりも異なる魔力の流れを・・・・」
賢者の青年はミーシアの言葉に目を閉じて魔力を探ってみた。
赤く、黄色く、青く、様々な魔力の流れの中に混じって金色や純白に輝く何か綺麗な魔力が浮遊していた。
目を開け、大きく頷く。

———————俺は・・・賢者になったのか・・・・。


★ ★


マキラドーラ入り口。
そこに白衣を纏った悪魔が突っ立っていた。
シャク達はそんな彼女に礼を言う。
「おかげで幻界は救われたかもしれない」と。丁寧に礼を述べた勇者達に研究員キルラーは笑顔を返す。
こうしてシャク達一行はとりあえずマキラドーラから立ち去った。

マキラドーラ周辺の平地。
今は魔物があまり徘徊していない場所。そんなところにシャク達は居た。
「・・・で、これからどうするの?」
レイアが不意に勇者へ問い掛けた。
「幻界の魔法陣を解除するのと同時にサリエルさんも運良く救出出来たし・・・」
「今からヒカル達と合流する。」
勇者の言葉に皆が頷く。
そして、シャクはヴェロニカに支えてもらっている黒紫色の髪の青年に視線を向けて言い放った。
「ヒカル達と合流したら、サリエルさんとヴェロニカ、ギルティさん、ヒルダさん、ミーシアさん、オルバさんはニルバーナの村へ帰ってもらう。」
「!」
唐突な勇者の発言にサリエルが叫ぶ。
「何言ってやがんだよ!!俺にはやる事があるって言っただろうが!!」
「確かにおしゃってました。ですが、その体では無理です。」
「私も無理だと思いますよ。」
スピオが苦笑して言った。
「漸くエウリアの呪縛から解放されたのですから・・・・」
「っ!」
食って掛かろうとしたサリエルであったがヴェロニカに制止させられる。
「恐らくサリエルさんが言った自身のやる事は・・・・滅神王エウリアを倒す事ですよね?」
赤髪の青年の問い掛けにサリエルは黙った。
「サリエルさん・・・・・」
黙った彼を見つめ、ヴェロニカは絶句する。
横でギルティもやっぱりな、と言う風な顔をしてみせた。
「ニルバーナの皆さんの目的は飽く迄もサリエルさんを救出する事です。だから・・・」
「悪いが俺ァ帰らないぜ。」
サリエルは勇者の言葉を遮ると鼻で哂った。
「言っただろう?俺にはやる事があるって・・・・それを遂行するまでは何があろうが帰らねぇ。」

と———————。
凄まじい殺気と腐臭がした。
「貴様等か、勇者どもってのは!」
猪を直立させて人型に似せた様な獣人が吠える。前屈みの姿勢であっても尚、皆よりは背が高く、横幅も2倍、3倍近くあり、巨大な棍棒を手にしていた。
「絶対そうだぜ!!こりゃァ、殺ればエウリア様に殺されずに済むぜ!」
応じたのは虎の獣人だった。先程の猪獣人程では無いが、十分に発達した肉体を持っている。無手ではあるが長く伸びた前肢の爪は太く、鋭そうだった。
現れた二体の魔物達はげらげらと不気味に哂う。
しかし、そんな魔物達以上に馬鹿にした様な笑みをギルティは浮かべて村雨を肩に担いだ。
「ちょろちょろと何所から湧いて来んのか知んねぇーけどなァ、邪魔なんだよ。俺等は遊んでんじゃねぇーの。」
言うとギルティはサリエルに声を掛けた。
「おい、根暗野郎。テメェー、さっきやる事があるってほざいてたな?だったら、そのやる事を効率良くする為にちょっくら腕鳴らしするってのはどうだ?」
淡い水色の髪の青年のにやけ顔に根暗青年は妖艶な笑みを浮かべる。
「此処でテメェーと俺とまな板女でコイツ等を殺ればシャク達も城まで同行を許してくれんじゃねぇーのか?」
「ギルティさん!!」
とシャクとレイアが叫ぶ。
「ギルティさん達の目的はサリエルさんを救出することじゃ・・・・」
「変わったんだよ。」
とギルティは村雨を構えて面倒そうに言い放った。
「此処まで来たら大ボスを打っ倒すしかねぇーだろ!それに、今まで騙してきた奴に、一太刀浴びせねぇーと気がすまねぇってんだ!」
「そうそう!自分だってサリエルさんが傍に居れば百万力だっつーんだよ!!」
ヴェロニカも聖焔の剣の柄を強く握り締め咆哮を上げる。
そして、青い青年はシャク達に言う。
「俺等がコイツ等を片付けてやっから、テメェー等はヒカル達と合流してそこで待ってろ!」
「でも!」
「必ず行くからよ!」
ギルティは裂かれた着物の袖を、ヴェロニカは慈愛の陣羽織を翻し、雄叫びを上げて獣人に突っ込んで行った。そんな彼等を慌てて制止しようとしたが、心地良い声がシャクを止めた。
「俺等は約束を守る輩だから、安心して仲間のところへ行け。」
「サリエルさん!」
当の青年はふっと笑うと薔薇刀の柄を握り、駆けて行った。
その背中を見つめていたシャクに鋭い声が刺さる。
「何やってんのよ!行くわよ、シャク!」
弾かれた様にシャクはレイアと封印師達が居る方へ行こうとし、戦う剣士達に向かって叫んだ。
「死なないで下さいよ!!」
——————もう誰も喪いなくはないから!
叫び、去って行く勇者を虎獣人が追おうとする。
「おい、待てってガキどもが!!」
しかし、眼前にサリエルが立ちはだかる。
「腰抜け野郎、そこを退け、邪魔だぜ!」
分厚い唇を巻くり上げ嘲笑う虎獣人。
黒紫色の髪をした青年は横様に構えた刀を顔の前まで持ち上げ、白銀に光る刃越しに相手を見据えた。
そして——————。
「邪魔なのは貴様等の方なんだよ。」
と不適に笑った。


★ ★


確か、シャク達はマキラドーラと言う町へ向かったはず。
とペインは内心思う。
と言う事はこのまま進めばいずれは会えると言うワケだ。
彼等は襲い来る魔物達を蹴散らし、勇者達との再会を求める為に歩を進める。
それにしても、どれだけ魔物を斬り捨ててもこの胸の悲しみは消えない。
———————私は何度大切な者を犠牲にしてまで生きなければならないんだ?
ペインは幼き日—————4歳、5歳と言った年頃だった頃。
ガムラン王国に押し寄せて来た魔物達から兵士達は国民を守る為に必死に戦った。戦争が終わった頃には皆が血塗れだった。しかし、幸いな事にたった一人の犠牲した出さずに済んだのだ。
魔物の攻撃からペインを庇って死んだ独りの兵士。
その顔を思い出す度にペインは胸を痛めた。
あの時、己が戦える人間であれば良かったのに——————。
それから王女は王女である事を辞めたのだ。
犠牲者を出したくないという想いから。
ドレスを捨て、しなやかさを捨て、女らしさを捨て————————。
ペインは騎士になった。
———————それなのに・・・私は・・・・!
悔しさに体を震わせている王女の背を眺めるだけでカーツは声を発することすら出来ないでいた。
その時、不意にペインが歩を止めた。
カーツも思わず歩を止める。
「ペイン王女様?」
「カーツ・・・」
彼女は振り向かずに名を呼ぶ。
そして———————。
「カーツだけは私の犠牲になってくれるなよ・・・・」
黒髪の青年は愛する女性の言葉を聞き絶句した。
しかし、それは一瞬の事。
「ペイン王女様、何故そんな事を・・・・!」
カーツが問い掛けた時だった。
「人影がある。あれは恐らく人間だ。」
美しき剣士の言葉に黒髪の青年は前方を見据えた。


★ ★ ★


魔物と戦っている人間が前方に居た。
シャク達一行は全力でその場に辿り着く。
風が渦巻く。渦は瞬く間に魔物達内部の熱を奪い去り、大気すらも凍りつかせた。魔物達も又目を愕然と見開たまま硬直する。
一気に吹き付ける冷気の残滓を魔物達に浴びせながらヒカルが叫ぶ。
「今です!!」
言われるまでもなくオルバが皇帝の鞭を振り上げ、ヒルダが両手の刀で一閃。皇帝の鞭に強かに打ちの召され、刀に切り裂かれる。悲鳴を上げることすら許されずに襲い掛かって来た魔物どもは砕け散った。
ヒカル達は一息つく。そして、何かの気配を察し、ヒカル達は視線を向ける。
と、そこには———————。
「シャク!!」
賢者は叫び、親友の方へ駆けて行った。

合流したシャク達は各々全てを語った。
マキラドーラへ向かい、幻界の魔法陣を消滅させたこと。
サリエルを救い出せたこと。
そして、賢者になったこと。
サリエルと言う名前を聞いたヒルダは顔を曇らせた。
「・・でも、良かったです。サリエルさんが無事でしたら・・・」
とミーシアが言う。
「それで、皆は・・・?」
ヒカルが周囲を見回し問う。
「此処へ来る途中、魔物に見つかってギルティさん達が引き受けてくれてて・・・・必ず此処へ来るって・・・・」
「そうか・・・」
その言葉を聞き、オルバが声を上げる。
「いや、此処は滅界だ。助けに行った方が良いかもしんねぇ。」
青年の声に皆が視線を向けた。
「ギルの旦那なら未だしも、ヴェロニカは対抗出来ないかもしんねぇ。そんでもって、サリエルさんは病み上がりなんだろ?だったら、加勢した方が良いですぜ。」
「ぼくもオルバさんの意見に賛成ですよ。」
ディが笑って言う。それに続き、スピオもミーシアも頷いた。
シャクは皆を見回し思案する。
———————約束したけど・・・・でも・・・。
「分かった。戻ろう、ギルティさん達の居る場所へ!」


★ ★ ★


雷速の振りで、ギルティの無双の扇から風が解き放たれる。それぞれの得物を振り上げ接近しようとした獣人達へ突風が吹き抜けると共に巨大は竜巻が直撃した。旋風の刃が吹き荒れ、獣人達の全身に無数の深傷を作る。
そこへ、ヴェロニカの振るった剣の先が猪獣人に左上から右下へ、右下から左上へと暴れ回った。同じく、サリエルは猪獣人の横を颯爽と駆け抜けた。青年がすれ違った後で少し遅れて血の赤が舞う。
そんな彼を見つめ女剣士が歓声を上げる。
「サリエルさん、格好良いっ!!」
頬を赤く染めた彼女であったが、鋭い目に戻すと背後へ忍び寄って来ていた虎獣人を跳躍して回避すると、体勢を立て直す。そして、聖焔の剣を全力で突き出した。鋭く炎に包まれた刀身が虎獣人の弛んだ腹に深く突き刺さり、燃え始めた。
すっと引き抜き、彼女は叫ぶ。
「どうよ!煉獄斬りを食らった感想は!!」
しかし、魔物は炎を消すと太い腕を振り上げ、素早く剣士を殴った。
「うっ!」
ヴェロニカがとんでもない速さで吹っ飛ばされた。
彼女は頭から岩へ激突し、停止した。
痛みに頭が揺らめき、立ち上がれない。
「ヴェロニカっ!!」
ギルティが叫び、眼前の猪獣人を斬り上げた。
そして、焦り気味で言い放つ。
「おいおい、どーしてくれんだよ・・・・俺等、魔法なんざァ使えねぇーんだぜ?」
サリエルも跳躍し、真空斬りを放った後にヴェロニカへ視線を向けた。
彼女は頭から血を流し、荒い呼吸を繰り返していた。
とそこへ———————。
「余所見は駄目じゃねぇーか!!」
濁声と共にサリエルは棍棒で殴り飛ばされ地面に叩きつけられた。
「サリエルっ!」
叫んだギルティは猪獣人を睨む。
「テメェーっ!!!」
青年は村雨を掲げた。それと同時に三人にしとしとと優しい雫が滴った。
村雨に封じられていた癒しの雨水だ。
その雨水はサリエルへ、ヴェロニカへと滴る。
しかし、かなりの深手のせいか少量の回復しか施さない。
「っ!」
掲げ、舌打ちをした青年を棍棒が直撃した。
「ぐはっ!」
「おい、どうしたんだよ?もっと楽しませてくれよなァ!」
遠方ではヴェロニカが髪の毛を掴まれ宙に浮いていた。
しかし、絶望はしなかった。
ギルティの顔がにやりと緩まる。
「何が可笑しいんだ!」
と猪獣人。
「何って?そりゃァ、テメェー等の死に様が想像できたからだよ。」
「なっ!」
青年の言葉と同時に猪獣人の体に毒を持った茨が巻き付く。
獣人は縛り上げられ苦しい中、茨を放った張本人に睨みを向ける。
「き、貴様っ!」
サリエルは刀身から生え出す茨で魔物を縛り上げ、口の血を拭った。
「おいおい、魔界の魔物にしちゃァ弱いじゃねぇーか・・・・それでもテメェー等、魔界の魔物か?」
「な、何をっ!」
血飛沫を上げている猪を見、ギルティは立ち上がる。
「良い刀持ってんじゃんか。」
「父さんのだ。」
言うとサリエルはギルティに言い放った。
「この豚は俺に任せろ。お前はアイツを頼む。」
亡き父親の面影が重なる青年にギルティは鼻で笑い飛ばす。
「フン、あの女はお前に助けられた方が嬉しいんじゃねぇーのか?」
ギルティは血と泥に塗れた微笑を浮かべる。
「・・・・行ってやれよ。俺が行ったとしてもアイツは喜ばねぇ・・・」
言葉で背中を押されたサリエルは薔薇刀に茨を戻すと倒れたヴェロニカに体を向けた。
お互い背中を合わせ、各々向かうべき魔物へと武器を構える。
「そいつを任せるぜ。」
「あァ。」
と言うギルティの返事を聞くと黒紫色の髪の青年は駆けて行った。


★ ★ ★


あの三人の場所へ向かおうとしていた矢先だった。
金髪と黒髪の騎士と再会したのは——————。
「ペイン!カーツ!無事だったのか!!」
とシャクが叫んだ。
その声に二人は暗い表情をした。
そんな彼等にミーシアが問い掛けた。
「何かあったんですか?」
彼女の質問に続けてディが歌う様に言う。
「そうですよ。貴女のお美しいお顔が泣いていますよ。いえ、そのお顔も好きですが。」
王女は目を閉じ、吐息をつくと口を開いた。
「・・・私は一度、命を落としたんだ・・・」
「!」
その発言に皆が驚愕の眼差しを彼女に向けた。
「命を落としたって・・・・一体どうして!」
とレイア。
「あの悪魔との戦闘で私は心臓を貫かれたんだ。それで・・・・」
「でも又何で、生きているんですか?」
オルバが問う。
青年の言葉に彼女は俯いた。これ以上は語れないのだろう。
それ故、黒髪の騎士が言いたくない時の口調で口を開いた。
「・・・あの悪魔の仲間の・・・リンネルと言う神官が突然現れまして・・・・一緒になって悪い悪魔と戦っていたんですよ・・・」
「?」
「仲間なのにどうして戦うの?」
レイアが目を見開いて問う。
「普通だったら加勢するだろう。」
とヒルダも唸る。
「それが———————」
カーツはあの時の出来事を懸命に話した。
大悪魔神官アプフェルが魔王をエウリアに吸収させようと動いていることを。
それを阻止する為にリンネルと言う神官が牙を向けたことを。
「何とかリンネルさんと俺は奴を倒しました。しかし・・・・急所を突かれていたペイン王女様は・・・・・命を・・・・」
騎士は拳を創り、息を吸い込むと続けた。
「ペイン王女様を甦らせる為に・・・・己の命を・・・・」
「!」
「だから、私はエウリアを許さないんだ。絶対、私も奴に斬り傷を負わせてみせる。」
ペインは言い放つ。
二人が戦った状況を把握できたシャクは自身達のマキラドーラでの事とギルティ達の事を彼女等に語った。
それを聞いた王女は真剣な表情をして言った。
「早く、ギルティ達と合流し、城へ向かおう!」
その言葉に皆が大きく頷いた。


★ ★ ★


——————此処で死ぬっ!
ヴェロニカは内心思った。
彼女の意識は死の渓谷を彷徨っていた。全身から力が抜け落ち、手から剣が落ち、からんと音を立てた。
「小癪な攻撃を仕掛けてきやがってっ!」
呻き一つ上げないヴェロニカを虎獣人は等閑に地面へ叩き付けた。
と———————。
足音が響いた。
歩いて来た青年はふっと吐息をつく。
その生意気な人間を睨み、虎獣人は不気味に笑い、
「何だ?もしかして、この女のアレか?」
と言い、叩き付けたヴェロニカの蘇芳色の髪の毛を掴んで掲げる。
もう剣士には意識すら残っていないのだろう。
だらりと人形の様に揺れ、血を滴らしている。
そんな彼女を見つめ、サリエルは薔薇刀の緑色の柄を掴んだ。
虎獣人の問いには一切答えない勢いで魔物へと突っ込んで行く。
魔物は疾風の如く駆けて来た青年の動きに対抗出来ない。
それ故、あっと言う形に口を開き、硬直する。
そして、肉食獣の目を己の弛んだ腹部へと下す。
そこには刀が刺さっていた。
次にゆっくりと背中へ視線を向ける。
やはり、そこにはその刀の先端が出ていた。
「き、貴様・・・・・!」
サリエルは刀を抜くと、ヴェロニカの手から滑り落ちた聖焔の剣を掴み、魔物の股間から頭の方目掛けて斬り上げた。
断末魔を上げる事も許されない程の痛みが魔物の全身を駆け巡る。
分厚い唇を魚の様にぱくぱくとしている巨大な虎獣人を見上げ、サリエルはそこで初めて口を開いた。
「その女、返してもらうぜ。」
言うなり、彼はヴェロニカの髪の毛を掴んでいる大きく太い腕を薔薇刀で斬り飛ばした。腕と共に吹き飛んだ女剣士をサリエルは抱き留める。
それと同時に斬り裂かれた虎獣人は後ろへと血飛沫を巻き取らせながら、大きな地響きと音を立てて倒れた。
一方、遠方では同じくギルティも猪獣人を倒したところだった。


★ ★


真っ暗な室内。
元通り綺麗に修復された滅神王の間。
その奥——————。
豪華な玉座に座る影。
そこから不気味な笑い声が聞こえる。
笑い声には怒り、快楽ともつかぬ幻想さが混ざっていた。
影は笑い終わるとすっと息を吸い、玉座から降りるとぺたぺたと裸足で広い部屋を歩く。
そして、独り言を呟く。
「フフ・・・あの悪魔神官・・・中々ふざけた小細工を仕掛けたな。想定外だった。」
ぺたぺたと歩く。
「自身の生命力を魔力に注ぎ込み、主達を石化させるとはな・・・・フフ、これは困った。」
影は笑いながらも苛立ちを隠せないでいる。
飾ってあった花瓶が割れ、花も砕け散った。
「おのれ、カルコスめ・・・・後一歩のところだったのに余計な事などしやがって。これじゃァ、ボクの計画がまるで水の泡じゃないかっ!」
部屋に響く。
そう、この影こそが滅神王三男エウリアだ。
彼が今怒り狂っているのは大悪魔神官カルコスの行動についてだ。
カルコスはローレライとヘンリを守る為、命を投げ出した。
神官は自身の生命力と引き換えに魔力へ全て注ぎ込んだ。その時の魔力は魔王二人を遥かに越えていた。そんな大魔力を操り、カルコスはローレライとヘンリを石化させたのであった。石化させれば例え、吸収されたとしても唯、石造を飲み込むだけであって、完全に魔王二人の全てを吸収することは出来ないからだ。
エウリアは目元を押さえ、呻く。
「このボクが未だ、全知全能では無い事が憎らしいっ!」
想像もつかぬ能力を持っていると恐れられる少年であったが、不可欠な事はあった。
「ボクには状態変化を治す能力は無い。幾ら、白蛇が居ようとコイツは回復しか能が無い。」
そこで言葉を切ると再び真っ暗な部屋の中で歩を進める。
「おまけに・・・勇者どもはボクの器を正気に戻し・・・・っ!」
そして、厭らしい笑みを浮かべ、くすっと哂う。
「でもまァ、良いさ・・・・カルコスの武器創造の能力は吸収した。・・・後は、状態変化を解く能力を得ることが出来れば先ずは満足だ。・・・・・・いや・・・・」
闇の魔王は舌舐めずりをする。
「・・・今からボクの城へやって来る勇者どもを全員吸収すれば良いんだ。そうすれば、勿論、全ステータスも上がるし、状態変化を解く能力もプラスされる。そして・・・・誰にも邪魔されず魔王二人の石化を解き、吸収出来るっ!」
喜びに叫ぶと高笑いする。
「ハハハハハハハっ!これでボクは全知全能の魔王になれるんだっ!」
己に喝采を浴びせ、玉座へ戻る。
そして、両腕を広げた。
「導いてやろう、勇者を・・・ボクの城へ・・・・」




続く…。
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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