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異世界のイストワール  第13章~集結~  その1

第13章~集結~


~前回のあらすじ~
マキラドーラ東の古びた家の地下室に辿り着いたシャク達は魔法陣使いキルラーと対面した。何とそこには気絶したサリエルの姿があり、シャク達は驚愕した。戦闘も飲んで彼等はキルラーに魔法陣を消してほしいと懇願した。しかし、彼女は快く魔法陣を消し、サリエルまで解放してくれた。そして、目を覚ましたサリエルは鬼神の如く刀を振り翳し、牙を向けてきたが、ディがエルガを呼び出してくれたおかげで何とか彼は正気を取り戻した。


以下は続きです。


*仲間を庇い、倒れたゼノに優しい輝きが振り注がれる。青白い顔に赤みが戻り、冷えて掛けていた体には元の体温が戻って来る。
そんな彼を見つめ、泣きじゃくり目を赤く腫らしているエイクが叫ぶ。
「ゼノ!!」
ラヅもリザも顔に希望を宿す。
ゼノはゆっくりと身を起こし驚愕する。
「僕は・・・・死んだんじゃ・・・?」
「これのおかげよ。」
リザは涙を拭い言うと、赤黒い石を見せた。そして、幻魔との遣り取りを全て話した。
その話を聞き、聖騎士は絶句し、本当なのか?と言う風にラヅを見た。当の彼は険しい顔で頷く。
それから、凄まじい魔力を上空に察し、ゼノは顔を上げた。
そこには黒竜と戦っている幻魔の姿があった。
「幻魔様っ!!」
ゼノは揺らめき立ち上がった。
「未だ動かないで!貴方は完全に回復していなんだから!」
とリザが叫ぶ。
「しかし、このままでは幻魔様が危ないじゃないですか!」
「そうだけど・・・今のゼノじゃ戦えないわ。ラヅさんもエイクも・・・・相当なダメージを受けてる。・・だから、幻魔様が戦って奴の動きを封じている間に回復しておかなくちゃ・・・!」
幻獣の少女の震えた声にゼノは唇を噛んだ。
その時だった———————。
轟音が響く。
ゼノ達は周囲を警戒しながら武器を構える。しかし、強大な魔力の蠢きに視線を上空に向ける。そして、驚愕する。
出現していた巨大な魔法陣が消滅した。溢れていた魔物どもの侵入が遮られたのだ。
「魔法陣が!」
とリザ。
「消えたっ!」
エイクも驚き、目を瞬かせせ、喜びの微笑を浮かべて飛び跳ねる。
「やった!!魔法陣が消えたよ!!これで終わったんだね!」
だが、ゼノとラヅの表情は真剣なものへと変化する。
そして——————。
「エイク殿、未だ終わってはいない様だ。」
「え?」
紅梅色の長髪青年の言葉に王子は表情を曇らせ、黒竜を見る。
「あ・・・そうだった・・・」
「亜奴を消さぬ限り終わらぬ。」
今にも魔物に突っ込んで行きそうな雰囲気の青年達にリザは叫ぶ。
「未だ回復できてないのよ!だから、行ったって・・・・!」
「それでも行かなくてはならないんです。」
ゼノは猫耳少女の言葉を遮る。
土巨人の斧の柄を硬く握り締め、続けた。
「例え回復できていなくても、例え死にそうでも・・・・未だ少しでも動けるのならば、武器を振るいます。それが、幻界を守ると決めた立候補者の務めです。」
「ゼノ・・・」
青年は少し微笑むと上空で死闘を繰り広げている幻魔に向かって大声で叫んだ。
「幻魔様!!そいつを下へ降ろして下さい!!!」


★ ★


———————何で俺は此処で突っ立ているだけなんだ?
ヒカルは愛するミーシアの死に涙を流しているヒルダの震える背を見つめ、己に問い掛けた。
———————何で俺は何もしようとしないんだ?
問い掛けずとも自身では分かっている。

そんな魔法は唱えられない。

傷を癒す魔法を唱えられないからだ。
魔法使い——————それは多彩な魔法を唱える事が出来る者。その多彩な魔法と言っても全ては攻撃魔法だけだ。炎、氷、雷、土、風、水、光、闇…あらゆる属性の魔法を詠唱する事が出来る。しかし、回復魔法や保護魔法を詠唱する事は出来ない。
何故、出来ない?
魔力の流れが違うからだ。
一般に魔法使いが掴む魔力の流れは攻撃的なモノばかりだ。その攻撃的な、他者に傷を負わせるものや、死を与える魔力を掴み、イメージを心の中で膨らませて呪文と共に発動させるものだ。
逆に、僧侶達が掴む魔力の流れは優しく保護するかの様なモノだ。そして、その魔力を多く掴み、心にイメージを膨らませる事が出来れば死の一歩手前の者を生き返らせる事も可能だ。
そう、魔法使いは攻撃的な魔力、僧侶は保護的な魔力と決められている。
———————俺はそれを知っているからミーシアさんの死を唯、悲しむだけで突っ立っているだけだ・・・・。
ヒカルは拳を創る。
そんな自分が嫌になる。
型に填められたことばかりをこのままやっていくのか。
———————いいや、そんなのは絶対に嫌だ!
魔法使いだから僧侶達が掴む魔力の流れは絶対に掴めやしない。
———————そんなのやってみねぇーと分からないじゃないか。それどころか、誰も掴もうとしないだけじゃねぇーのかよ?
魔法使いの青年は目を見開き、ミーシアの横に跪く。
そんな青年を涙目で見、ヒルダが問う。
「お、おい・・・何しよーってんだよ?」
オルバも涙を少し拭い、ヒカルを見つめた。
当の彼はミーシアに手を翳し、目をゆっくり閉じる。
そして———————。
「暫くの間、黙ってて下さい。」
ヒカルは言うと集中し始めた。
普段の攻撃的な魔力の流れが集ってくる。しかし、魔法使いはそれらを跳ね除ける。
この魔力では無い——————俺が掴みたいのは。
ヒルダは何かをしようとしている魔法使いの青年を眺める。
冷え切り、もう生気の無い人間の身体に手を翳す。
そんな行為は一つしかない。
「お、おい!蘇生魔法はテメェーには・・・!」
「ヒルダさん!」
叫ぼうとした上司をオルバが制止した。
「今はヒカルに任せましょーや。」
「だけどな!」
「コイツなら・・・・もしかすりゃァ、ミーシアを生き返らせてくれるかもしんねぇ・・・・」
「そんなっ!」
有り得ないと続けたかった。
本来なら魔法使いは蘇生魔法は使えない。況してや、僧侶であっても蘇生魔法は高位魔法であり、習得するのに時間が掛かる。だから魔法使いには無理がある。
首を小さく振るヒルダにオルバは言い放った。
「俺等には今、どーする事もできねぇーんだ・・・・・・・・だったら、ヒカルを信じる事しかできやしねぇーんすよ。」
ヒルダは部下の言葉に心を打たれた。
「俺がヒルダさんの立場だったら、そーしますぜ。」
———————惚れた女が目の前で死ぬなんざァ、耐えられねぇのは分かってらァ。だが、俺だってヴェロニカがそーなれば・・・・信じる。
オルバは内心思う。
そして、遠くで剣を振り回して必死になって戦っているヴェロニカの事を想う。
実を言えば、オルバ自身彼女も此処へ残す心算だったのだ。
これ以上、彼女を危険な目に遭わせたくないと言う想いがあったからだ。
だからと言って、ヴェロニカを自身に縛り付けておいても彼女は幸せには決してなれない。
もし、己が彼女を庇う事が出来ずに彼女が此処で命を落としたら?
アイツは今まで捜し続けていた男に会う事すら叶わず、死んでいってしまう。
俺がアイツの幸せを奪ったも同然になる。
そんな事は絶対にしたくはない。
だから、ヴェロニカを此処へ留まらせなかった。それよりか、シャク達と共に進み、サリエルと言う男と出会えばきっと彼女は幸せになれる。
俺の幸せはアイツの幸せだ。
ミーシアの幸せも同じだ。
ヒルダが幸せならば彼女も幸せなのだろう。だから、彼女は今回の様な行為に出たのだ。唯、一身に彼を守りたいが故に。しかし、それは間違っていた。彼女の行為は間違っていた。逆に彼を不幸せにしてしまった。
ヒルダは目を閉じ、溜息をすっと吐くと口を開いた。
「そうだな・・・・」


★ ★


冷え切った愛する女性の亡骸を抱きしめ、咆哮を上げる黒髪の青年。涙が止まらない。自然と溢れ出てくるのだ。まるで、ダムから大量の水が溢れ出るかの様に。
そんな騎士を無表情で見つめ、リンネルは思う。
———————とても大切な人だったのでしょうね。
泣き叫ぶカーツの姿は子供みたいだった。情けない男だった。本当に騎士なのかと疑われても仕方が無い様に見えた。
しかし、誰だってそうなるのだ、と思うリンネルが居た。
だから、泣く青年の横に跪き、手を翳す。
「リンネルさん・・・・?」
カーツは涙を拭おうとはせず、唯、悪魔を見つめるだけだった。
当の彼女は無表情で返す。
「私の命をペイン様に捧げれば生き返ります。」
「!」
「それ故、今から蘇生の儀式を行います。」
翳した悪魔の手が煌く。しかし、そんな彼女の手をカーツは掴んだ。
「止めて下さい!!」
「?」
小首を傾げるリンネルの手を放すとカーツは泣きながら続けた。
「そんな事は・・・止めて下さい・・・・」
「カーツ様?」
「貴方の命と引き換えにペイン王女様が生き返ったとしても・・・・ペイン王女様は喜びません・・・・」
そして、カーツは二呼吸程後に付け足す。
「ペイン王女様は・・・・そう言う方ですから・・・・・」
「ですが、カーツ様が泣かれていましたので・・・・」
リンネルの言葉にカーツは無理に作り笑いを浮かべる。
「・・お、俺は唯の泣き虫なんですよ・・・・昔から・・・」
悪魔の少女は瞬きする。だが、リンネルは再び手を翳す。
「リンネルさん!!」
彼女の手から光が溢れ出す。
「カーツ様、私はペイン様をどうしても生き返らせたいのです。」
「何故・・・・!」
「滅神王エウリア様を止められるのは勇者達のみ。カーツ様達も勇者の仲間でしょう?だからです。・・・・・私が死んで、ペイン様が復活なさる。そうして、滅界が救われれば本望です。」
リンネルは機械音で言う。
そんな彼女を絶句して見つめ、カーツは拳を握った。
無な少女の目はいつしか滅神王城の方へ向けられていた。
——————私にとってヘンリ様がいらっしゃる滅界が無事であれば宜しいのです。
少女は目を手に戻すと何やら呪文を唱え出した。
カーツは悪魔の詠唱を止め様と手を掴もうとしたが、何かの魔力で防がれた。
次第にペインとリンネルの身体が輝いていく。
それに伴い、カーツの負った傷も癒えていった。何事も無かったかの様に完全に回復した。
「リンネルさんっ!」
名を呼ばれ少女は無の仮面を見せる。
そして——————。
「ヘンリ様にもし会われたら、宜しくお伝え下さいませ。・・・・このリンネル、ヘンリ様の御命令に背いた事を心より深くお詫び申し上げたい・・・と・・・」
「!」
その言葉を最期に彼女の全身が輝き、砕け散った。


———————ヘンリ様・・・・・貴方様の御命令を御守りする事が出来ませんでした・・・・・。



カーツの絶叫の後、それと同時にペインの頬に赤みが差す。体温も戻って来る。
青年ははっとなり、愛する女性を見つめる。
次第に彼女の目が開かれていく。
「ペ、ペイン王女様!!」
「カ、カーツ・・・・・?」
そして、ペインは勢い良く起き上がる。
「わ、私は一体!?」
美しい顔が驚愕に変化する。
ペインは周囲を見回し、言う。
「私は・・・確か・・・・命を・・・・」
騎士は悲しい顔をし、王女に全てを話した。リンネルが自身の命と引き換えにペインを甦らせたと言う事を———————。
それを聞き王女は顔を悲しさに歪め、拳で地面を叩いた。
「何て事をしたんだ!!」
そして、叫ぶ。
「私はそうまでして生き返りたくはなかった!!何故・・・何故・・・・・!」
カーツの悔しさに奥歯を噛んだ。
他に何か良い方法があったはずだ。
何も誰かが犠牲になる様な事はしなくて良かったはずだ。
美しき騎士は立ち上がるとカーツに言い放った。
「カーツ!絶対にエウリアを許すな!!」
「はい!」
黒髪の青年は涙を流し、王女の敬礼した。


★ ★


マキラドーラ東の古びた家の地下室。
シャク達とエルガ、封印師達に全てを聞かされ、サリエルは理解した。全てを知ったせいか何故か全身が軽い。そして、全身を支配していた憎悪や憎しみなどの負の感情が全てとは言いがたいが消え失せている。しかし、どうしても多くの罪悪感に苛まれる。
暗い表情をし俯いている息子にエルガは笑顔で言った。
「そろそろ、お別れみたいだね。」
その言葉にサリエルは叩かれた様に顔を上げた。
「父さん!!」
「エルガさん!!」
「エルガ師匠!!」
エルガは苦笑し、封印師二人を見た。
「時間・・・だよね?」
「はい。」
とディとスピオが申し訳なさそうに頷く。
ヴェロニカも涙を浮かべ、エルガに駆け寄った。
「エルガ師匠!!」
我が娘の様に剣術を教えてやった少女に向日葵を咲かせ、亡き村長は言う。
「どうしたの?ヴェロニカ。涙なんか浮かべて。」
くすりとエルガは微笑む。
そんな彼の姿が次第に薄れていく。
「アハハハハ、そんな泣かないでよ。まるで、もう死んで会えないみたいに・・・・って、そう言えば僕、死んでたよ。アハハハハハ!」
快活に村長は言って再び笑う。
そんな父親の笑い声を聞き、サリエルは言う。
「何・・・ふざけた事言ってやがるんだよ・・・・・」
肩を震わせて言う息子にエルガは視線を向ける。
サリエルはいつまでも陽気な父親を見つめた。涙で潤んだ目で真っ直ぐと。
愛する息子を真っ直ぐ見つめ返す彼の姿はもうあまり見えなくなっていた。
エルガは苦笑する。
「サリエルはどうしてこんなに甘ちゃん王子に育ったんだろうねぇ?」
「そりゃァ、テメェー自体が甘ぇーからだよ、馬鹿野郎。」
とギルティが頭を掻きながらそっぽを向いて呟いた。
その青年の目から顎部分に掛けて何か線が煌いていた。
「そうだね。」
とエルガ。
村長はふっと息を吐き、シャク達に視線を向けた。
「シャク君達、色々と迷惑を掛けて本当にすまない。」
「いいえ!そんな・・・・!」
「これからもサリエル達を頼むよ。」
「エルガさん・・・・」
シャクの横でレイアが涙を流し、目を赤くしていた。
そして、次に村長はギルティに声を掛ける。
「ギルティ、ごめんね。」
「何がだよ!?てか、テメェーいっつも主語が無ぇーんだよ!主語を言えって!!」
ギルティはエルガに怒鳴る。
何か怒鳴らないと泣いてしまいそうだったからだ。
「フフ、ごめん・・・」
義理の父親の言葉に青い青年は鼻で笑い飛ばす。
「フン、そのごめんってのは全てに対してだろ?」
「うん、そうだね。」
「・・ったく・・・」
面倒臭そうに眉根を寄せる青年は二呼吸程後に口を開いた。
「まァ・・・・後の事ァ、任せろ・・・・・」
その言葉にエルガは微笑むと付け足した。
「うん。サリエルの事、頼んだよ。」
「あァ。」
笑う村長の足はもう見えなかった。そのせいか目元が異常に熱くなる。
「ヴェロニカ。」
「エルガ師匠!!」
剣士の少女は涙を流し、首を小さく振る。まるで、行かないで、と言う風に。
「君には礼を言わなくちゃね。・・・・・・サリエルの事を想ってくれてありがとう。父親として嬉しいよ。」
「そんなこと・・・・」
「だから、これから先もサリエルの事を頼んだよ。」
「勿論っすけど・・・」
鼻を啜り、涙を拭う。そんな彼女に微笑み、最期に俯いている息子へと笑みを向ける。
「サリエル・・・」
「・・・・」
エルガは困り笑いを浮かべ、黙っている息子に続けた。
「ごめんね・・・・サリエルに何も遺してあげられるものが無くて・・・・」
「・・・・」
「あ、でも・・・・着物と僕の薔薇刀があるか。それに、ニルバーナのみんなが居るね。」
「俺ァニルバーナへは帰れねぇ。」
サリエルは言うと声を震わせた。
「俺ァ・・・罪も無ぇ村人達を・・・・殺してしまった・・・・これは謝って済むもんじゃねぇ・・・・俺ァ死んでも良い人間なんだ・・・・」
「サリエル・・・」
拳を握り締めて言う父親の着物を纏った青年にシャクは叫んだ。
「そんな事無いですよ!・・・・ニルバーナの人達はサリエルさんの帰りを今も村を復興させながら待っているんです!」
「そうですよ!生き残った皆さん、心配して待っているんです!」
レイアがシャクの後に続き声を上げた。
「みんな・・・サリエルさんの気持ちが分かるって・・・・・」
「シャク君・・・レイアちゃん・・・・」
エルガが切ない顔をする。
「だから、一緒に戻りましょうよ!みんな、サリエルさんを待っているんですから!ヒルダさんだって、ニルバーナの村長はサリエルさんだって言ってましたよ!」
勇者の言葉を聞き村長は笑う。
「ほら、サリエルには帰る家があるし、村人達を守らなきゃいけない使命があるんだ。だから、シャク君達と村に帰りなさい。」
「・・・っ!」
父親の囁きにサリエルは弾かれた様に顔を上げた。
そして——————。
「俺ァ、それまでに未だやる事がある。だから・・・・父さん・・・・」
青年は口を閉じ、目から涙を流した。
何か言いたくても涙が邪魔をしてくる。サリエルはそんな涙を拭おうとはせず、ふた呼吸程後に口を開いた。
「だから・・・・見ていてくれ。」
最後の光を惜しむ様にサリエルが言い放った言葉にエルガは、
「分かったよ、サリエル・・・」
と言い顔に向日葵を咲かせ、シャク達の前から消えた。

——————サリエル・・・いつまでも愛しているよ・・・・。

と言う言葉を遺して—————————。


★ ★


魔力が底を突いている。
それでは剣を持ち、戦うしかない。
闇から創り出した優美な魔剣の柄を強く握り締め、血塗れの滅神王ヘンリは突っ込んで行く。
後方に引いた魔剣に殺意を込めて、相手が間合いに入った瞬間に一閃。
しかし、エウリアには通用しなかった。2匹の蛇の奇声と共に魔法風が吹き荒れた。その刹那、ヘンリを眩い光が襲う。
「っ!」
ヘンリは咄嗟に己の目を庇う。
そんな彼に向かって次は黒蛇の口から地獄の業火が吐き出される。灼熱の激流がヘンリを丸呑みにする。凄まじい熱風により、ヘンリの手から魔剣が消える。無手となった魔王次男の首を銀色の蛇が長い胴を巻き付き絞めると、彼の足を床から離す。
「くっ!」
宙に浮いたヘンリは苦しさに顔を歪ませた。
顔を真っ赤にし、兄が必死に暴れるがエウリアは全く意に介さない。
「そろそろ、長かった余興も終わりだ。」
少年の冷静な言葉にヘンリは絶望染みた顔をする。
——————やはり、これまでなのか・・・・!
魔王が苦しさのあまり目を閉じかけた。
と——————。
「エウリア様!!ヘンリ様をお放し下さい!!」
聞き覚えのある声が響いた。
その声にヘンリは目を開ける。
名前を呼ばれた魔王三男は呆れた様な顔をし、声の方に横目を向けた。
「カルコスか・・・・ボクに何の用だ?」
カルコスは防御結界の中にローレライを横たえ、エウリアの近くまで歩いて行くと言い放つ。
「ヘンリ様をお放し下さい。」
殺気を放ちながら言葉を発する悪魔に魔王三男は冷めた目を向けた。
「何故、お前がボクに命令する?」
「どうか、ヘンリ様をお放し下さい。」
「ボクの質問の答えになっていない。・・・何故、お前がボクに命令をする?」
しかし、悪魔は退かない。
「ヘンリ様をお放し下さい!」
退がらない大悪魔神官にエウリアは眉根を寄せ、声色を変えた。
「もう一度言おう。・・・ボクの質問の答えになっていない。・・・・何故、お前がボクに・・・・・・・・!」
全てを言い終わる事は出来なかった。
瞬時にエウリアの体が無数のナイフに切り裂かれた。三男は咄嗟の事で回避出来なかったらしく、大量の血を撒き散らす。そこへ、鋭く研ぎ済まされた槍がエウリアの腹部を貫いた。即座にエウリアの端正な顔が歪む。
悪魔神官の攻撃で力が抜けたのかヘンリを捕らえていた銀色の蛇が次男を手放した。その機を逃すカルコスでは無い。彼は素早くヘンリを魔法で助け出すとローレライと同じ防御結界の中に入れた。
カルコスは更に結界に魔力を注ぎ込み、結界を強化させるとエウリアに向き直った。
当の三男は突き刺さった槍を床に投げ捨て、白蛇に噛み付かせて回復していた。次第に何事も無かったかの様に傷が塞がり、血が止まった。
傷が癒えるとエウリアはカルコスに視線を向けた。
しかし、少年に怒りの感情は無かった。それとは逆におぞましい微笑が浮遊していた。
そして、魔王は快活な笑い声を上げる。
「ハハハハハハハ、恍惚感でいっぱいだ。何故、ボクは君の隠された能力に気付かなかったんだろう?・・・・カルコス、君の魔力は素晴らしい。天才大悪魔神官として名を馳せ、滅界中に知れ渡っている。だが、それ以外に君には能力があった。・・・・先刻、ボクを攻撃したあの技・・・・壮大な魔力を元に多くの武器を作り出し、遠距離で敵を攻撃する・・・・・・実に素晴らしい。これは称賛に価する・・・・」
エウリアは悪魔を値踏みする様な目付きで舐めまわし、笑い声の後続けた。
「是非とも、君のその能力が欲しい。」
その言葉と同時に銀色の蛇が白衣の悪魔に向かって疾風の如く牙を煌かせて掛かって来た。




続く…。
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2015-03-20 : 【異世界のイストワールⅠ】 : コメント : 0 :
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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【異世界のイストワールⅠ】
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~番外編~
Happy Halloween !! . 2014

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【勇者の特権を取り戻す為に俺は魔王を復活させ、無限ループを繰り返す。】


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