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異世界のイストワール  第12章~闇に囚われし向日葵の青年~  その8

※字抜けとか字間違いとかしているかもしれませんが許して下さい。

フジパンの特選メロンパンを約8分くらい焼いた。そしたら、超絶美味かった。温かい間に食べると焼き立てクッキーで、少し冷めると噛んだ時にカリって言うんだよ。めっさ美味かったわ。これオススメだわ。
あれだと何個でも食える気がするぜっ!!


※明日は2話くらい出すかもしれません。多分、13章かな。その1、その2・・・・みたいな感じで。


~前回のあらすじ~
マキラドーラへと到着したシャク達は魔法陣使いを捜すのだが見当たらない。困っていたシャク達であったが、ディの調べで魔法陣使いの居場所を終に突き止めた。
そう言うわけで彼等は東へと向かった。


以下は続きです。


*全身が痛い。そのせいか体が思う様に動かない。
カーツは懸命に顔を上げる。
周囲には血塗れで倒れたペインとリンネルの姿があった。
悔しさに体を震わす。
——————守る事が出来なかった・・・・愛する人を・・・・。
俺は何の為に騎士になったのか。
何故、ガムラン王国騎士団の隊長にまで地位を上げたのか。
決まっている。
愛する女性を守る為だ。
それにも関わらず、俺は———————。
高笑いが響いた。
地に伏す彼の前方には悪魔。
滅神王ヘンリの不意打ちを食らっても尚、ぴんぴんとしている悪魔。
「悔しいでしょう?ヘンリーに味方してもらったってのに、その様だもんねぇ~♪」
「くっ・・・!」
「ボクも本当は君達みたいに限界なんだよ。体力だって無いのさ★」
そこまで言うと悪魔は残酷な表情をし、唇を吊り上げた。
「・・・例え限界近くてもねぇ・・・ボクは死ぬ事は出来ないんだ★」
滅神王エウリアの解放を喜ぶまで。
彼を食べるまで。
この世界の最期を見届けるまで。
カーツは痛む体を奮い立たせる。
ホーリースピアを握る手に最後の力を注ぐ。
そんな騎士を驚いた目で見つめ、アプフェルは言った。
「あれれ?未だボクを殺ろうとする気かい?止めときなよ~♪君の体力はもう無いはずだしィ♪」
—————何せ、漸くボクに能力が戻ったからねぇ~・・・殺すなんて簡単さ。
「君がボクを殺れる確率はきっと、1%くらいだと思うよ★・・・・・フフン、つまり、勝てないってワケ♪」
しかし———————。
黒髪の青年はホーリースピアを構え、悪魔を睨む。
「・・た、例え・・・勝てる確率が・・・1%・・だ、だったとしても・・・・俺はその・・1%に・・か、賭けてみる・・・・」
殺気を放ち、戦闘態勢に入った顔立ちの良い青年を舐める様に見物し、アプフェルはくすりと哂い、突っ込んで来た。
右手にためた力を一気に騎士へ叩き込む。しかし、悪魔の攻撃をカーツは水晶の盾で防ぐ。そして、素早くホーリースピアを悪魔へと突き刺す。
「おっと!」
アプフェルは難無くそれを回避。
その動きを先読みしていたのか、カーツは悪魔が飛び退いたところへ蹴りを入れた。回避出来ず不意打ちを食らったアプフェルは思わず痛みに顔を歪めた。しかし、そんな悪魔の顔をずっと見ている程カーツは甘くない。青年はそのまま高く跳躍する。上空で狙いを定め一気に決着をつける心算だろう。
アプフェルは舌舐めずりをし待ち構えた。
——————見え見えの攻撃ばっかするんだねぇ~♪でも・・・・そー言うの好きだよ♪
と———。
彼の顔に掠り傷を負わせた者が居た。
アプフェルはナイフを投げた本人の方を向く。
そして、顔を少し怒りに歪めた。
——————リンっ!
だが、その一瞬が悪魔の命を奪った。
上空から降りて来たカーツのホーリースピアが彼を切り裂き、心臓を深く抉った。大量の血液と醜い絶叫を撒き散らせ、神官は両膝を地面に突き立てた。
カーツは攻撃直後に悪魔から間合いを広げ、聖なる槍を悪魔に向ける。
そして、無表情の少女へ声を掛けた。
「リ、リンネルさん・・・御無事でしたか・・・・」
「はい。私はヘンリ様を御守りする為、死ぬわけにはいきません故。」
無の神官に一瞬だけカーツは苦笑し、思う。
——————リンネルさんが一瞬だけでも奴の目を惹き付けてくれたから俺のジャンプ攻撃が通じたんだ。
安堵したカーツは悪魔の絶叫が止むと視線を向けた。
アプフェル血塗れの真っ赤な顔には恍惚とした表情が浮かんでいた。
「・・・ボクは・・・死ね無いんだよ・・・・エウリアちゃんを・・・殺るま・・で・・・・は・・・・・」
そんな言葉を吐き、悪魔は事切れた。
まるで、操り人形の糸が切れたかの様に———————。

カーツは悪魔の死を見届けると片膝を折る暇も惜しみ、倒れた美しき王女の許へ駆けて行った。そして抱き起こす。
「ペイン王女様!!」
リンネルも駆けて来る。
カーツは必死に最愛の女性の名前を呼び続ける。
涙が頬を伝い出す。
枯れない涙の滝を創る。
その時、ペインが目をゆっくりと開いた。
「ペイン王女様!!」
「カ、カーツ・・・・か・・・・」
「はい!」
ペインは力無げに言葉を紡ぎ、涙を流す青年に問い掛ける。
「や、奴は・・・・?」
「リンネルさんと倒しました・・・・!」
騎士の返答に王女は弱く笑う。
「そ、そうか・・・・あ、相変わらず・・・強いな・・・・道理で私が・・追いつけない・・・はず・・だ・・・・」
「そんな事は・・・!」
カーツは奥歯を噛み締め、続ける。
「・・・お、俺は貴方の護衛でありながら守れなかった!傷を負わせてしまいました!」
美しい王女は痛みに顔を歪め、血を吐く。
カーツは青白いペインの顔を見つめ、雫を落とした。
彼女の囁く声が次第に弱くなっていく。
「泣くなよ・・・カーツ・・・・男だろう・・・?」
「はい・・・しかし・・・・・・な、涙が止まりません・・・・・・!」
泣き出す騎士の頬をペインは撫でた。
青年は王女の手に触れる。
「・・・涙を・・・止めねば・・・私は・・・・・し、叱って・・逝く事になる・・・・」
「何を!!」
カーツは弱々しく微笑むペインを見つめ、首を振る。
「貴方だけを死なせやしません!」
「だ、駄目だ・・・・カーツ・・・・お前は生き延びて・・・シャク達の役に・・・そして・・・・エイクの王国復興を・・手助けして・・・・」
「何をふざけた寝言をおっしゃっているんですか!!ペイン王女様は生きて・・・・・」
黒髪の青年の言葉をペインは遮った。
「は、早く・・・シャク達のところへ・・・・」
「俺は貴方を此処に置いて行きません!!」
「お、王女としての・・・・め、命令で・・もか・・・・?」
「はい!」
カーツは泣きながら叫ぶ。
王女はふっと笑うと言う。
「相変わらず・・・が、頑固・・だな・・・・。フフ・・・昔から・・・幼い時からお前は・・・私の事ばかり気にかけてくれていた・・・・何度・・わ、私が・・・・大丈夫だと・・・・言ってもな・・・・・」
その言葉に青年は目を閉じて思い返した———————。

王国のバルコニーの手摺の上に乗って歩く幼き日のペイン。
同い年のカーツはそれを何度注意した事か。

少なからず魔物が蔓延る森へ護衛を撒き、好奇心を満たしに行った若き日のペイン。
そんな彼女にしつこく彼は付き纏った。

王国に侵入した魔物を排除する為、勇ましく身を鎧に包む美しき王女。
そして、魔物の攻撃から民衆を身を投じてまで守り通したペイン。
そんな彼女の背中を預けられ、カーツは必死に槍を突いた。

未だ溢れ出しそうな程ある。
「ち、父上や・・・母上より・・・お、多く・・・カーツに・・・怒られた気がする・・・フフ・・・本当は・・・わ、私は・・・・・・カーツの・・・声が・・・聞きたかった・・だけかもしれ・・ない・・な・・・・」
女騎士は涙を流し、力無げに笑った。
カーツはそんな冷え切ったペインの手を握り、唇を開く。
「俺は・・・いつも・・貴方様の自由奔放な行為が気掛かりで・・・・毎度も肝を冷やしていました・・・・しかし・・今回の様な事は・・・・!」
言い掛けカーツは口を閉じた。
目の前には安らかな王女の顔があった。
最期の涙を流した死に顔が——————。
黒髪の騎士は絶句。
そして次第に湧き上がってくる悲しさと怒り、悔しさの入り混じった叫び声を上げた。
声が枯れても良い。
情けない男だと思われても良い。
唯、カーツは泣き叫んだ。
腕の中に最愛の女性のこの世に又と無い亡骸を包んで————————。


★ ★

ヒルダの負った傷は癒えていた。
理由は言わずとも分かる。
装備を敢えてしなかったミーシアの手織りのマントのおかげだ。
道具袋に収めているマントのおかげだ。装備せずとも彼の傷を癒す様に仕込まれた愛情のマント。
愛しく想う女からの贈り物を易々と敵に触れられるのは避けたかった一身だった。
その癒しのマントを冷え切り、あどけなく弱々しい笑みを浮かべている少女に掛ける。
しかし、死に掛けている彼女には何の効果も齎さない。
ヒルダはミーシアを抱き起こし、顔を暗くした。

——————こいつが死に掛けてるからマントに施した回復の魔法の威力も衰えてきたのかよ。

ミーシアは暗い顔をしている深緑色の髪の青年に囁く。
「・・ヒ、ヒルダさん・・・が・・・無事・・で・・良かった・・・・」
死に掛けても尚、愛するヒルダの身を案じる彼女に当の彼は目元を熱くする。

——————どうしてお前はいつも俺の身ばかり・・・・。

悔しさに唇を噛んで黙っているヒルダにミーシアは微笑を浮かべる。
「・・・・わ、私・・・ヒルダさんを・・・ま、守りたかったんです・・・・迷いの無い強さが欲しかったんです・・・・ずっと・・・」

忘れるわけがない。
昔の出来事を—————————。
幼き日の淡い恋路。
貴方との記憶を誇っていた。
ニルバーナの村から出て、薬草を摘みに出かけていた子供の頃の私。
すぐそこだからと言って独りで行ったの。
そして、薬草を摘んでた。

だけど、私は悲鳴を上げた。
魔物に囲まれて。
思わず尻餅をついた。動けなかった。
死を覚悟した。
でも、その死は幾ら待っても訪れなかった。
勇ましい雄叫びを上げて深緑色の髪をし、自警団の制服を纏った少年が剣を手にして魔物から必死に私を守ってくれた。
私に向かう鋭く尖った爪を体を張って私から遠ざけ、その少年は魔物達を一掃したの。
傷を負った貴方は剣を収めると照れ隠しなのかそっぽを向いて、私に手を差し伸べてくれた。
だから、私は貴方の手を借りて立ち上がった。

そう、あの時からよ——————貴方を守ろうと決めたのは。

「あの時の・・・・恩返しを・・し、しようって・・・思ってやったこと・・・だけど・・・・・私・・・・駄目ですね・・・・」
「!」
少女の言葉にヒルダは思い出す。
昔、子供の頃にこの子を助けた事を。
「でも・・・貴方はいつも・・・拒んでた・・・・私から身を守られる事を・・・」
ミーシアは涙を伝わせた。
そんな彼女の涙を見、ヒルダは言う。
「当たり前だろ!男が女に守られてどうすんだよ。格好悪いだろが!」
——————違う。
心の奥底では己の言葉を否定している。
普段と変わらない青年の口調にミーシアは微笑む。
「そうね・・・でも・・・こ、今回は・・・守れました・・・・貴方を・・・」
「命と引き換えにな。」
ヒルダは皮肉を込めた声色で返した。
そして、肩を竦めて続ける。
「全く、俺を守るとかほざいてたわりには情け無ぇーよな。あっさり逝っちまうんだからよ。」
強がりでも何でもない。
唯、こんな言葉でも言っていないと折れそうだからだ。
「だから、テメェーはついて来なくて良かったんだ・・・・・」
鋭い双眸で見つめる彼の視線を受け、冷えた少女は小さく首を振った。
「・・で、でも・・・ヒルダさんを・・・助ける・・こ・・とができ・・ました・・・」
そんな健気な笑顔を浮かべる少女を溜息をついて見、ヒルダは拳を握り締めた。

——————馬鹿・・・が・・・・。

「・・・わ、私・・・・役に・・・立てた・・・ん・・でしょう・・・か・・・・?」
そして、ミーシアの顔から次第に微笑みが失せていくのを感じた。
どこまでも一途な彼女は彼に手を伸ばそうとしたが———————。
届かぬ手は空を彷徨い、そのまま地に落ちた。
青年は目を見開く。
その時、彼の目から何かが滑り落ちた。
目から落ちた何かは事切れたミーシアの頬を濡らした。
傍に居たオルバは顔を逸らした。
ヒカルは唯、何も出来ない己を呪い、硬直していた。
「・・・ついて来なくて良かったんだよ・・・」
次第にヒルダの声が普段の強さを失っていく。
声が震える。
「ったく・・・・・どこまでも・・馬鹿な女だぜ・・・・」
静かに泣くヒルダの腕の中には愛情を精一杯注げなかった彼女の亡骸が在った。


★ ★ ★


マキラドーラ東の古びた家の地下室。
そこに白衣の悪魔が居た。
ブラックチョコレートの様な肩までかかる髪、赤い眼鏡。そして、手には目玉を先につけた杖を握っている。
そして、新たに張っている魔法陣の中に横たわっている見覚えのある者が——————。
その人物を見るなり、女剣士が怒りの矛先を悪魔に向け、吠えた。
「貴様っ!!サリエルさんに一体何をしたんやっ!!しばくぞ、コラァァァァァっ!」
ヴェロニカの怒声に白衣の悪魔はびくっと肩を強張らせた。
確かに、魔法陣の上に横たわっているのはサリエルだ。
生前のエルガが着ていた黒い布地に灰色の薔薇が生えている着物。
そして、彼の腰にはエルガの刀—————薔薇刀。
「サリエル・・・・」
ギルティも目を見開いた。
「だ、誰っすか!君達は!!」
突如現れたシャク達に驚愕し、彼女も又声を震わせる。
目前の悪魔からは全く殺気を感じられない。
やはり、ヘンリの言っていた通り、素直に従っているだけの様だ。
だから、シャク達も武器は構えない。
「俺等は勇者側の人間だ。」
「ゆ、勇者!?マジで!?」
と悪魔。
「アンタ、キルラーって言うんだろ?」
シャクの問い掛けに彼女は驚愕する。
「何で自分の名前知ってんの!?エスパー!?はっ!?」
何やら混乱している様だ。
そんな彼女に向かって純白のタキシードを纏ったディが笑顔で進み出て、声を掛けた。
「御機嫌よう、ミス・キルラー。」
「わっ!この人、超格好良いんですけど!!ヤバイよ!」
当の彼女は喜びの悲鳴を上げて騒ぐ。
ディはキルラーに流し目を送り、続けた。
「ぼくが格好良いのは当たり前なんだけど、君に一つ頼みたい事があるんだよ。ミス・キルラー、聞いてくれるかい?」
「はい★勿論っすよ!!」
と悪魔が大きく笑顔で頷く。
「フフ、良い子だねぇ。・・・・で、実は・・・・・」
「幻界に出現させている魔法陣を消せ!そんで、サリエルさんを返せ!!」
丁寧に要求しようとしていたディを遮り、ヴェロニカが叫んだ。
「ヴェロニカ!」
レイアがもう駄目だ、と言わんばかりに目元を押さえた。
シャクも肩を落とす。
しかし、キルラーは一瞬びくついたもののきょとんとした顔をする。
「あ、それなら別に良いっすけど・・・」
と言う。
意外な悪魔の言葉に皆が目を瞬かせた。
そして、キルラーはにやりと厭らしい笑みを浮かべてねっとりと続けた。
「まァ、取り引きってワケじゃないんすけど~・・・・エウリア様に自分が怒られない様に手引きしてくてたら別に良いっすよ~うふふふふ★」
「何や!それ!」
ヴェロニカが突っ込む。
ギルティも頭を掻いて言い放つ。
「汚ぇー野郎だなァ、コイツ。」
「ふふふ★」
「でもまァ、あっさり魔法陣も消してくれるし、サリエルさんも返してくれるんだし、良いんじゃないの?」
レイアが苦笑して言う。
「そうそう★だから、宜しくね★」
キルラーのウィンクにヴェロニカは冷たい視線を刺した。
「良いけぇー、さっさとしろや。」
「へ~い。」
彼女は笑うと目玉のついた杖をサリエルの魔法陣の上に突く。その途端、魔法陣が一瞬光った後、消えた。
それを見届けると、ヴェロニカは皆を押しのけ駆けて行く。彼女の後をシャク達も追い、サリエルの許へ集う。
そんな彼等を見つめ、キルラーは囁く。
「他の魔法陣を消してきます★」
悪魔は静かに去って行った。
全く白衣の子には興味を失った勇者達はサリエルを抱き起こし名前を呼んだ。
「サリエルさん!!サリエルさん!しっかりして下さいよ!!」
「サリエルさん!」
シャクもレイアも口々に声を掛ける。
名前を呼ぶ女剣士の顔に焦りが浮かんでいる。

目を開けて。
お願い————————。


ノラマ。
よく笑う少年。
すぐに泣く少年。
決して人を襲う事の無い心優しい魔物の子。
父さんと俺とで一緒に過ごした。
あいつが望む事は何でもしてやる。
俺が出来る範囲ならな。
だが、父さんの形見の様なお前の為なら俺が不可能だと分かっている事でもしてやる。
命懸けで。
だから——————。

でも、何だ?あの変わり様は。
普段のあいつじゃ無ぇ。
口調も目付きも態度も・・・・全部違ぇ。
今までのあいつは何所に行ったんだ?
魔界に来てからああなったのか?
それとも————————。


—————サリエルさん——————

誰だ?
俺の名前を呼ぶのは。

—————サリエルさん——————

この声・・・何処かで聞いた事がある。
確か—————。


目を開いた。
彼の黒い瞳には覗き込む者が写っていた。
「サリエルさんっ!」
ヴェロニカは喜びに涙を流し、倒れている彼に抱きついた。
シャクもレイアも互いに顔を見合わせて喜ぶ。
黒紫色の髪の青年は剣士に抱きつかれたまま身を起こすと、周囲を見回す。
「・・・此処は一体・・・・」
「よぉ、眠れる地下室の王子。・・・いや、闇に囚われし向日葵の青年か・・・」
「ギルティ!」
皮肉たっぷりの声を掛けられサリエルは驚愕する。
「な、何故、テメェー等が此処に居るんだ!此処は・・・!」
「魔界ですよね?」
シャクが言葉を引き継いだ。
見覚えのある青年達を見回し、サリエルは口を開く。
「テメェー等は・・・旅人の・・・」
言いかけると彼は目に殺気を宿した。その殺気に気付いたのかヴェロニカは彼から体を離し、シャク達と封印師兄弟の前に立つ。サリエルは素早く腰の刀を抜き放つと斬り掛かって来た。しかし、そんな青年の刀をギルティが村雨で受け止めた。
「テメェー、やっと起きたかと思うと今度は何をしやがる心算だァ?・・・もしかして、王子様なりに魔物の討伐ですか?」
サリエルは妖艶な笑みを浮かべる。
「フフ、そうだなァ・・・魔物討伐にでも出掛けるか!」
言うと彼はギルティの刀を押し返し、素早く突きを入れた。
ギルティの鳩尾目掛けて薔薇刀が貫通する。
「っ!」
彼から引き抜くと、サリエルは刀の柄を強く握った。それに伴い、サリエルの刀の刀身から薔薇の蔓が生え、ギルティへ殺到する。鋭く、毒を滴らせている蔓は青年に巻き付き縛り上げる。
「くっ・・・!」
「ギルティさんっ!」
シャクとレイアが焦り顔をして武器を青年に向けたが、それをヴェロニカが手で制す。
そして、捜し続けていた彼に叫ぶ。
「サリエルさん!何を!」
当の彼は怪しく輝く瞳を剣士の少女へと突き刺し、言い放った。
「気安く俺の名前を呼ぶな。・・・俺からしてみりゃァ、テメェー等は敵同然だ。」
「そんなっ!」
驚愕している彼等を横目に、青年は震えた声で呟いた。
「・・・誰も助けてはくれなかった・・・・父さんを・・・・」
悲しみが波の様にうねっている。
体中の血液が凍る様な心地がする。
そんな中、封印師兄弟はお互い顔を見合わせると、頷く。
そして、ディが竪琴を構えた。
シャク達は彼を見、内心思う。
———————エルガさんを・・・・呼び出すんだ・・!
「・・・・誰も俺の父さんを・・・助けてはくれなかった・・・」
二度響いた言葉は切り傷が風に触れる様に痛かった。
確かに、シャク達はエルガを助ける事が出来なかった。
唯、呆然と立ち尽くすしかなかった。
エウリアさえも止められなかった。
何も返せない。
言葉が見つからない。
絶句している勇者達にサリエルは言葉を鞭の様に撓らせた。
「手を血に染めてまでテメェー等は父さんを助けてはくれなかった!父さんは唯、普通に生きていただけってのによ!だから、テメェー等は裏切り者なんだよ!」
「それは違うよ、サリエル。」
猛毒の様な殺気を放つ青年を制止させたのは澄んだ水の様に綺麗な男の声だった。
もう、この世に居ない男の声だった。
皆がその主の方へ視線を投げる。
そこには顔に向日葵を咲かせた男が立っていた。
男は透けた姿では無く、生前の肉体そのものをしていた。
その男を見るなり、サリエルは驚愕に目を見開く。
「と、父さんっ!」
サリエルは刀を床に落とした。
そのせいでギルティを縛っていた茨も消滅する。ギルティは解放されると刺された鳩尾から出る血を止める為、首に巻いていた魔法のマフラーを巻く。。
ディの曲により、召喚されたエルガは愛する息子に向かって優しく微笑んだ。
「ただいま、サリエル。」
「父さんっ!」
黒紫色の髪の青年は男目掛けて駆けて行った。そして、父親の前まで辿り着くと、サリエルは驚愕の眼差しで問い掛けた。
「何で、父さんが生きてるんだよ!父さんは確か・・・・」
「アハハハハ、確かに変だよね。僕が生きているなんて。」
とエルガは笑う。
シャク達もそれはサリエルと同意見だった。
幻界で見た時には透けていたはずのエルガの体は生前と同じ肉体を成している。握手だって不可能ではない。
「どうして、エルガさんの体は透けてないんですか?」
レイアがディに囁いた。
恐らくサリエル意外の人間は同じ疑問を抱いていることだろう。
不思議な顔をして問い掛けてくるレイアにディは微笑む。
「フフ、少し魔力を注ぎまして生前のお姿にしてみました。その方が嬉しいでしょうから。」
「ディさん・・・・」
シャク達は感謝した。
少しでも会えたから——————生前の彼に。
「サリエル・・・よく聞くんだ。」
エルガは真っ直ぐに息子を見つめる。
そして—————。
「サリエル、もう自分の手を血で染める戦いはしないでくれ。」
「っ!」
「サリエルはそんな子じゃないでしょう?」
「父さん!何を甘っちょろい事抜かしてんだよ!!腹が立たないのか!?自身の正しいと思ってやった行いが否定され、殺された事に!」
激昂する息子を穏やかな目で包み、エルガは微笑んだ。
「僕は否定されて当然だったと思うんだよ。」
「はっ!?」
眉根を寄せるサリエルは何かを言い掛けたが父親の言葉で遮られた。
「僕等はあの少年に騙されていたんだ。」
その一言は大きくサリエルの胸を抉った。

——————騙されていた・・・ノラマに・・・・。

眩暈を覚える。
あの時、滅神王城内で見た弟の様に想っていた少年の容姿が脳裏に甦る。

——————俺は騙されていたのか・・・・?

「あの子は滅神王三男エウリア。最強最悪の破壊神。・・・・大昔、魔界で大戦争を起こし、その結果として石化させられ、人間界へ封じられたらしい。・・・でも、僕がその封印を解いちゃったせいで・・・事態はこんな事に・・・・」

——————意味が理解出来ない。いや、理解出来ている。だが、頭がそれを否定する。

「自身の能力を回復する為に僕等を利用していたんだ。」
「・・・ンで、魔界へ帰る寸前くらいにエルガが殺されて、狂ったお前に浸け込んだって話だ。」
ギルティが耳を掻きながら言葉を引き継いだ。
「まァ、魔族ですから当然、人間の憎悪や怨念には喰らいつくしなァ~・・・絶好のターゲットだったんだよ、お前は。・・・おまけに腕も立つ・・・そりゃァ、敵から身を守るのはジャストだぜ。」
サリエルは驚愕の事実に床に両膝を突き、呆然とした。
「どーせ、要らなくなったら食う心算だったんじゃねぇーのか?」
「ギルティさん!」
シャクが制した。
憎まれ口を叩く彼は両手を広げ、肩を竦めた。
「でも、そうなる前に助け出せて良かったわ。」
とレイア。
エルガは微笑んで頷くと、絶句している息子に顔を向けて口を開いた。
「サリエル、僕は償え切れない罪を犯してしまったよ。あの子に躍らせていたとは言え・・・村長失格だよ。・・・・・やっぱり、殺されても仕方無かったんだ・・・・」
「父さん・・・」
「僕のせいで、サリエルを危険な目に遭わせてしまった。これも父親失格だよ・・・」
「父さんのせいなんかじゃァ無ぇ!!俺ァ、別に・・・」
その後の言葉を紡ごうとするが言葉が出て来ない。それは父親も悪いと脳内が言っているからなのだろう。
俯き、唇を噛む息子を眺め、エルガが苦笑を浮かべる。
そして、彼はサリエルと同じ目線にし、肩に手を置く。
「サリエル、ごめん。」
父親の謝罪の言葉を聞き、青年の頬を涙が伝った。
そして、悔しさに体を震わす。
奥歯が砕けそうな程の力で噛み、サリエルは声を絞り出した。
「父さんだからってな・・・そう易々と許せるかよ・・・・」
息子の返答にエルガは困り笑顔を浮かべ、
「参ったなァ・・・」
と呟いた。


★ ★ ★


僅かな胸の上下運動を凝視し、白衣の悪魔は目を見開いた。
———————生きていた!!
喜びに自然と涙が溢れてくる。
大悪魔神官カルコスは強力な防御結界の中、死に掛けている我が主滅神王ローレライの生還を祈っていた。祈るしか出来なかったのだ。
大悪魔神官と言えど彼は癒しの魔法を詠唱する事が出来ない。
それ故、魔王の絶命を回避する事が不可だ。
この時ばかり、カルコスは己を呪った。
我が主の危機を救う事が出来ない部下など必要ない。
そんな言葉が彼の全身を縛り上げる。
遠くの方ではヘンリが血みどろの死闘を演じている。
やはり、カルコスはそんな彼の無事を祈るしか出来ないでいる。
——————俺は口先だけじゃァ、いつも偉そうになのに、肝心な時には役立たずなんだ。俺は・・・俺は・・・・!
硬く目を閉じて内心を痛めつける神官の頬を何かが触れた。
はっと気付き、悪魔は目を開けた。
「ローレライ!!」
当のローレライは力無げに微笑を浮かべると口を開いた。
「あ・・・ら・・・帰って来ちゃった・・・の・・・?」
「あァ!」
返事を返す部下にローレライは問う。
「カ、カルトス・・く、君・・・・も、もしか・・し・・て・・・泣いて・・る・・の?」
悪魔は魔王の言葉に慌てて涙を手の甲で拭うと普段の口調で返した。
「な、泣いて無ぇーよ!上から水が降って来たんだよ!」
「あ、あら・・そう・・・・・で、でも・・・お洋服は・・・濡れ・・て・・ないのね・・」
カルコスは白衣を見、憎まれ口を叩いた。
「乾かした。」
その言葉を聞いて傷だらけの魔王は微笑んだ。しかし、それは一瞬のこと。
即座に声色を変える。
「ヘ、ヘンリー・・・・は・・・・?・・・あ、貴方が・・・居るって・・事は・・・あの子も・・居る・・で・・しょう・・?」
カルコスは唇を噛んだ。
そんな部下の態度に魔王は言う。
「・・・た、戦って・・る・・のね・・?」
「・・・あ、あァ・・・・」
「何て・・・無茶な・・事を・・・・」
「でも、勇者どもには力を貸してもらえた。」
「そ、そう・・・・」
「アイツ等・・俺等があんな酷い事したってのに・・・」
「良い・・人達・・・で・・しょう?」
言って笑う魔王は咳き込む。
「あんまし喋るなよ!」
カルコスは魔王を黙らせる。
このままじゃ駄目だ。
何とかして傷を癒さなくては魔王は———————。
「待ってろ、俺が何とかその傷を癒してやるから!」
悪魔は言い放つと魔法に手を翳した。
癒しを施すために—————。

———————俺は滅界中に名の知れ渡っている天才悪魔カルコスだ。やって出来ねぇー事は無ぇ。


続く…。
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2015-03-18 : 【異世界のイストワールⅠ】 : コメント : 0 :
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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~番外編~
Happy Halloween !! . 2014

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【勇者の特権を取り戻す為に俺は魔王を復活させ、無限ループを繰り返す。】


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