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異世界のイストワール  第12章~闇に囚われし向日葵の青年~  その6

※字抜けとか字間違いとかしているかもしれませんが、許して下さい。


~前回のあらすじ~
滅界に辿り着いたシャク達とヘンリ達魔族は襲い掛かって来た魔物どもと一戦交えようとしていた。その時、大悪魔神官アプフェルの出現により勇者一行は三手に分かれる事になった。ペインとカーツはアプフェルと応戦。滅神王ヘンリとカルコスはローレライを助け出す為、滅神王城へ。そして、シャク達は幻界に出現した魔法陣を打ち消す為、同じ魔力が漂うマキラドーラへ向かう。


以下は続きです。



*金髪が靡く。
ペインは双眸に鋭さを増し、悪魔を斬り上げた。回避が遅れた神官は斬られ、体を反り宙を舞う。硬い地面に背中から叩きつけられた彼はゆっくりと立ち上がり、困り苦笑を浮かべ、白衣が血で染められ凍っているのを眺めた。
その神官の無防備な背中へカーツのホーリースピアが刺さり、血を吐く。
悪魔は前のめりに倒れる。
———————ちっ・・・・ヘンリーに不意打ちでフレアを食らい・・・況してや、エウリアちゃんに能力を吸い取られ完全回復していないから・・・何て様だよ・・・。
痛みに体を震わせながら起き上がるアプフェルをペインとカーツは間合いを広げ見つめていた。
「中々、しぶといですね・・・ペイン王女。」
とカーツ。
「あぁ・・・魔王にあれ程凄まじい魔法を食らっても未だ生きているとはな・・・・・・・・・・・・・もし、アイツがあれを食らっていずに私達がコイツを惹き付けていたら・・・・」
「あの時と同じ様になっていましたよ。」
「そうだな。」
「な、何・・・ご、ごちゃごちゃ言ってんの・・・?デートの・・・約束か・・何か?」
アプフェルが手の甲で血を拭いながら哂った。
「ボクは・・・未だ生きてるよ・・・?喋ってる暇なんて無いでしょ?」
「フン、“今は”だろ?安心しろ、お前はもう時期死ぬ。」
とペイン。
そんな絶世の美女の台詞を聞き、アプフェルは高笑いを返す。
「ぶあはははははははっ!」
「何が可笑しい?」
カーツは眉間に皺を寄せる。そして、二人は互いに武器を構える。
悪魔は破れた白衣を脱ぎ捨て、漆黒の服の皺を直すと残忍な笑みを浮かべて言う。
「ボクは死ねないんだよ・・・・エウリアちゃんを殺るまではね。」
その言葉を合図にアプフェルは疾風の如く二人に突っ込んで来た。


★ ★


黒竜が吐き出した黒い炎は幻界を腐らせた。
多くの幻獣達が倒れた。
幻魔でさえも荒い呼吸を繰り返している。
そんな王を支え、リザは黒竜を見上げる。
——————あんな奴が此処へ来るなんて・・・・お仕舞だわ・・・。
幻魔に庇ってもらった故、今の彼女が在る。それでなければ、リザは今頃—————。
「幻魔様、大丈夫ですか!」
と少女。
当の老人は咳き込み、血を吐く。
「だ、大丈夫じゃが・・・・勇者達が・・・た、託してくれた・・・人間達の・・・命の光が・・・・」
「!」
リザは驚き、内心焦る。
幻魔である老人であっても黒い炎の影響でこの深手だ。
当然、彼等は無事では済まないだろう。
不安顔の少女に幻魔は言う。
「リ、リザよ・・・ワシの事は良い・・・・あ、あの人間達の許へ・・・・行ってやりなさい・・・」
「幻魔様!!」
「・・御主が・・・亜奴等の許へ行っている間・・・・・ワシの命が尽きるまで・・・全力で黒竜を抑える・・・・じゃから・・・」
「そんな!」
「良いのじゃ・・・・これがワシの運命なのじゃから・・・・」
幻魔は言うとリザから離れる。
リザは目に涙を浮かべて王を見つめた。
そして、幻魔は赤黒い石を懐から取り出し、少女へ手渡す。
幻獣の子はそれを受け取ると小首を傾げる。
「こ、これは・・・・?」
「“幻魔石”と言ってな・・・・大昔からワシの代までの幻魔の魔力を封じ込めた石じゃ・・・」
「何故、その様な大切な石をアタシに・・・・!」
「ワシが・・・・黒竜を抑えている間・・・・・・この石の魔力を解放し・・・勇者達の仲間を・・・・幻界を甦らせてくれ・・・・・・ゴホゴホ!」
「幻魔様!」
悲鳴染みた声を上げるリザに赤黒いローブを纏った老人は力無げに微笑む。
「な、何・・・心配せずとも・・ワシがこの幻界から・・・消えようが・・・・御主等を見守っておるぞ・・・・・」
王の言葉に少女は涙を流す。そして、喚く。
「嫌よ!逝かないで下さい!」
しかし、幻魔はすっと幻界の空へ浮かび上がっていく。
どれだけ手を伸ばそうが届かない空へ————————。
そして———————。
「・・・ディ達、兄弟を頼んだぞ・・・・リザ・・・」
幻魔はその言葉を言い置き、黒竜へ向かって行った。
そんな王を見上げ、リザは涙で顔を濡らし叫んだ。
「もう、アタシを独りにしないで!!」

——————そうよ・・・・独りにしないで・・・・・。


★ ★ ★


城内の床を濡らすのは真っ赤な血。
ヘンリは乱れた呼吸を繰り返し、残酷な弟を睨んだ。
しかし、当の彼自身、少し安堵している。
——————俺が傷を負ったのも無駄では無かったようだ・・・・。
ふと思う。
滅神王エウリアをヘンリ自身が惹き付ける事によって、エウリアはヘンリに目を向ける。
それを好機と知ってか、大悪魔神官カルコスは倒れたローレライを連れ、強力な防御の結界を張り巡らせていた。
——————カルコスさん・・・・やはり、昔と今も頭の回転が速い。これで、一先ずローレライがエウリアに吸収される事は無いな。
口の血を手の甲で拭い、ヘンリは冷めた目で三男を見据える。
そんな兄を見つめ、エウリアは哂う。
「相変わらず、冷めた目をする兄貴だなァ・・・・フフ、目を見ただけで寒気を覚えるよ。」
「フン、それは兄として当然なのだよ。弟に舐められる兄程、惨めな兄は居ないのだ。」
「そうだなァ・・・・でも、今、アンタはボクに舐められてるよ?」
無傷の少年は哂うと妖艶な笑みを浮かべ、続ける。
「・・・・・・まァ、そろそろ終わりにしようよ、ヘンリお兄様。ボク、もう飽きちゃったよ。」
言って伸びをし、欠伸をする弟を睨み、ヘンリは鼻で哂う。
「俺は未だ遊び足りないのだがな。」
先程よりも強烈な殺気を全身から放つ滅神王次男を横目で見、エウリアは口を開いた。
「時間稼ぎはしなくて良い。・・・・どれだけ貴様等が足掻こうが、無駄な事だ。」
そこまで言うと少年は我が主と共に結界の中に居るカルコスをちら見し、溜息をつく。
「カルコスだって、強力な結界を張ったと思っているらしいが、残念ながらボクが彼の結界を破壊するなど容易い事だ。」
哀れんでいるかの様な幼き魔王の言葉にヘンリは奥歯を噛んだ。
エウリアの能力を前にして此処で屈したくは無い。
そんな事をすれば、魔王として——————いや、彼の兄として一生の恥だ。
だから、ヘンリは己の目から鋭さを消す事はしない。
「エウリア、俺は貴様が嫌いなのだ。今も、昔もな。」
「へぇ~・・・ボクが嫌いか・・・・一体どんなところが?」
「貴様の全てだ。」
言うと魔王次男は冷たい双眸を弟に向け、言い放った。
「何故、同じ魔族として手を組まないっ!?何故、俺等に牙を向けるっ!?」
ヘンリの問い掛けが気に食わなかったのか、少年は次第に体を怒りに震わせ始めた。
そして、鋭い声で叫ぶ。
「話したところで貴様等・・・ボクを蘇生道具としか見ていない貴様等にボクの気持ちなど分かるはずもないっ!」
魔王三男の叫び声に城内が揺れる。凄まじい闇の波動を感じる。
少年は頭を抑え、狂った様に喚く。
「貴様等が何時、ボクを同じ魔族だと見てくれたっ?貴様等が何時、ボクを弟の様に見てくれたっ?貴様等が何時、ボクを—————————」
喚くとエウリアは拳で壁を思いっ切りぶっ叩いた。
壁はひび割れもせず、ぴくりともしない。
唯、弱々しい彼の拳からは血が流れるだけだった。
歯を食いしばり、その体勢のまま続ける。
「ボクは愛されてきた・・・・体が出来るまで・・・。しっかりとした知能を持ち、身動ぎ出来るまで・・・・。ボクは大切に扱われてきた・・・・・まるで宝石の様に・・・・。今回は・・・・勇者抹殺の最後の切り札として愛され、大切に扱われてきた・・・」
言うと彼は曝け出した己の胸に手を当てる。
「多くの魔族の肉体を、血を、細胞を加え、ボクは創られた。・・・・唯、三男としてボクは創られたんじゃなく・・・・あらゆる細胞を取り込んだらコイツは一体どうなるのか・・・と言う実験と・・・・・・先に創られた貴様等の蘇生道具。・・・・その後、お父様はボクと貴様等を合成したらどの様な強さになるのか・・・・研究していた・・・・・フフ、その結果を見た時、ボクはどう思ったと思う?」
「っ!」
ヘンリやカルコスは目を見開く。
当の彼は赤い目の方を抑え、不気味な笑い声を上げる。
「フフフ・・・ハハハハハハハっ!・・・最高じゃあないかって思ってさ、ボク自身に委ねたよ。そうしたら、実験材料と蘇生道具にされた怒りと・・・・最強の魔族に生まれ変われる喜びを感じて・・・・はあ~ァ・・・爽快だった・・・」
その感情のせいで大昔、滅界は崩壊した。
満足げに話す三男はそこで言葉を切ると、殺気を放ち、身構えているヘンリに鋭い双眸を向け———————。
「後者の喜びを前にして、貴様等が抵抗するのはもう目障りだ。早く、ボクの血肉になれ。」
その言葉と同時に、耳を劈く様な激しい波動が城内を覆った。


★ ★ ★


マキラドーラの入り口付近には幻界に突如出現した巨大な魔法陣と同様のものが在った。やはり、滅神王次男ヘンリや大悪魔神官カルコスが言った様に、此処に魔法陣を描いた張本人が居るらしい。
シャク達は各々襲い掛かって来る魔物どもを蹴散らし、終に此処まで辿り着いた。
次々とその魔法陣の中へ飛び込んでいく魔物の群れを眺め、奥歯を噛む。
「何て事だよ、ありゃァ。」
ギルティが頭を掻きながら面倒そうに呟いた。
ヒルダも舌打ちをする。
「あんな大きな魔法陣を描いた魔物は一体何所に居るんでしょうか?」
ミーシアが言う。
そんな彼女に向かってオルバが殺気を放ち返す。
「そりゃァ、名前はキルラーって分かってるだけだが、姿形は分かったもんじゃねぇーから、片っ端から殺って行くんだよ。・・・・どーせ、名前を呼んだところで素直に出て来ねぇーしさ。」
皆が各々頷いた時だった。
やって来た勇者達一行に気付いたのか、魔物達が突っ込んで来た。
しかし、牙を向けて掛かって来た魔物どもの視界が一瞬にして真紅に染まる。
魔法使いが動いた。噴出した炎はヒカルの頭上で一度巨大な塊になった後で破裂。
飛散した無数の火球が破壊の意志を持ち、前方の魔物達を焼き尽くしていった。
「ヒカル、ありがとう。」
当の彼は勇者の言葉に次の魔法を詠唱するべく目を閉じ、返した。
「礼は後だ。」
「あぁ。」
ヒカルの高位火属性魔法フォーラルガを食らっても尚、魔物どもはマキラドーラの中から湧いて出て来る。


シャクは突き出された爪を寸前で回避する。そして、ペルセウスの剣の柄を強く握り締め、突きを入れる。刺された魔物はその場に断末魔を残して息絶える。
次なる魔物は耳元まで裂けた口を大きく開き、奇声を上げ飛び掛って来た。彼はそれを神鏡の盾で防ぎ、即座にその攻撃を跳ね返した。
そんな勇者を四天の棍で魔物達を薙ぎ払いつつ横目で見、レイアは叫ぶ。
「結構、様になってきたじゃないの!」
シャクは多くの魔物を斬り捨て、応じる。
「まぁーな!・・・つーか、レイアもだろ!」
笑い合う二人の間に淡い水色の髪の毛をした青年が割って入って来た。
「ごちゃごちゃ言わなくて良いから、さっさと片付けちまおうぜ!!」
ギルティは叫び終わった瞬間、動いた。
一気に魔物達との間合いを縮めるギルティの手に鋭い光が生まれた。浅く腰を落としたまま、風の疾さで相手の脇を掠める様にして駆け抜けた。一瞬遅れて、魔物達の血の赤が飛沫となって散る。
互いの間合いを出たところで彼は足を止め、次第に群らがってくる魔物ども目掛けて無双の扇を力を込めて振る。忽ち、刃を含んだ竜巻が魔物達を飲み込む。


と——————。
背中に硬い感触があった。
岩壁だ。
追い詰められた事を悟り、己に呆れる。
——————ちっ・・・サリエルさんの事ばっか考えてたらこんな様になっちまった。
ヴェロニカは大勢の魔物に囲まれ、身動きが出来ない状態に陥っていた。
何所を見ても逃げ場はない。
舌打ち。
斬り捨てても、斬り捨てても奴等は湧いて来る。
そんな彼女に向かって、魔物達が一斉に、腰まであろうかと言う長い両腕を振り翳してきた。
ヴェロニカは盾を装備していない為、防御策が前で両腕を交差させる事しかない。
その魔物達の鋭く、毒液が滴る爪が振り下ろされる寸前に、魔物達の青白い肌が凍った。
剣士は目を見開き、驚く。
魔物どもが氷の像と化している。
「な、何で・・・」
「また、油断したってのかよ?」
とオルバの声がした。
「オルバ!また、貴様か!」
叫ぶ剣士にオルバは言う。
「袋の鼠になってたテメェーを目撃したのは俺だが、凍らせたのはヒカルだ。感謝しな。」
青年は魔法使いと共に凍った魔物達を容赦無く壊すと、ヴェロニカの方へやって来た。
彼女は魔法使いを見、礼を述べた。
「ありがとう、ヒカル。」
「いえ・・・」
「俺には無ぇーのかよ。」
「無ぇよ。馬鹿。」
とヴェロニカは言うと、迫り来る魔物どもを睨み、剣を構えた。
それに応じて、オルバも鞭を、ヒカルは魔法詠唱の為身構える。
「ヒカル、今度はデケェーの一発どんと頼むわ。」
オルバが笑って言う。
剣士も言う。
「いや、ニ、三発どんと頼む。」
二人の注文に魔法使いは呆れた顔をして呟く。
「注文多い過ぎ・・・」
その言葉と同時に大量の魔物どもが流れ込んで来た。


前方の空間に血の赤が浮いた。
次第に濃くなっていくその赤が、やがて闇の様に黒くなり、人型となっていく。破れた法衣を身に纏った魔道士らしき魔物が禍々しい杖を振り翳した。
と———————。
ヒルダとミーシア、封印師兄弟の周囲の地面に異変が生じた。
岩肌に次々と亀裂が入り、陥没する。そこから突き出されたのは人の手。いや、人であった者の手だ。穴を掻き分け、半ば白骨化した多くの死体が這い出て来る。
ミーシアは息を飲んだ。
———————ゾンビっ!
生者とは正反対の領域に存在するゾンビは、その仮初めの命を保つ為に、生者の生命力を好むと言われている。
法衣を纏った魔道士の合図と共に、飢餓状態にあるゾンビの群れは、争う様にしてヒルダ達と封印師兄弟の全てを吸い尽くそうとして襲い掛かって来た。
ヒルダが真っ先に動いた。
彼は疾風の如く、ゾンビ達に向かって行くと左右に斬鉄刀と叢雲剣を持ち、駆け様に斬った。しかし、ヒルダの攻撃を食らったはずのゾンビ達は何の反応も無く、唯、目の前に居る生者へ向けて歩を進めている。
青年は舌打ちをし、もう一度攻撃に出ようとしたが———————。
下から足を捕まれ、倒れそうになる。
「っ!」
彼の足を掴んでいるのは多くのゾンビの手。
必死にそれを振り払おうとするが、ゾンビのわりには力が強く、簡単には放してくれない。刀で手を斬ろうが、次の手が伸びて来、青年を捕らえる。
その刹那、女の悲鳴が上がった。
ヒルダは焦りの表情を浮かべ、悲鳴の方を見る。
そこにはミーシアと封印師達の姿が——————。
スピオは弓矢を放ち、ディは療光のハープで“沈静なる奇想曲”を奏で、彼女を守ろうとしている。しかし、その抵抗も虚しく、ゾンビ達向かって来る。
ヒルダは剣でゾンビの手を無数回斬り、漸く解放されるとミーシア達の方へ走って行こうとした。
しかし、邪魔が入り舌打ちをする。
先程、ゾンビを遣した魔道士だ。
「退け、邪魔だ!」
とヒルダは一喝。
しかし、魔道士ははけたけたと奇怪な笑い声を上げた。それに呼応して、魔道士の身体が変形していく。
ヒルダは驚愕に目を見開く。
青年の前には先程の魔道士は居なく、代わりに腐臭を放つ巨大な化け物が居た。
先刻の様に法衣は纏っていない。
色素を失った蓬髪がまだらに生え、肉は爛れ、ところどころに骨が見えている。
零れ落ちそうな程の眼球がヒルダに向けられた。異様に長く太い腕が頭上高く掲げられる。
避わさなくては命に関わりそうな気がしていた。
自分自身それは痛い程分かっていた。
そうではあるのだが、青年は今までに無い恐怖に支配され、動けなかった。
「ヒルダさんっ!」
ミーシアの悲鳴染みだ叫び声が上がる。
防御する暇も無く、振り下ろされた太い拳の直撃を食らい、ヒルダの身体が地面に叩きつけられた。
彼は血塗れで、ぐったりと地面に伏す。
その一撃で剣を握る力も立ち上がる力すらも奪われた。
「・・・くっ・・・・!」
ヒルダは痛みに顔を歪める。
そんな彼を見たミーシアは迫り来るゾンビ達を押し除け、祝福の杖で叩き、ヒルダの許へ必死に駆けて行く。しかし、瀕死状態のヒルダを更に痛めつけようとゾンビの親玉らしく魔物は再び腕を頭上高く掲げた。
「駄目ぇっ!!」
少女が声が枯れよとばかりに叫んだ瞬間だった。
親玉の体が発火した。
炎に焼かれ、悲鳴を上げている魔物に向かってヴェロニカが煉獄斬り。
そこへ、ヒカルの高位火属性魔法フォーラルガ。
止めと言わんばかりにオルバが魔物の首に鞭を巻きつけ、縛る。
「皆さん!!」
ミーシアは目を輝かせた後、倒れたヒルダに駆け寄った。
そして、彼の生気を取り戻す為、少女は癒しの魔法を唱える。

親玉をオルバ達が惹き付けている一方、粗方、魔物どもを倒したシャクとレイア、ギルティは封印師兄弟の援護へ回った。シャクが二人の前に己の体を摺り込ませ、ゾンビ達の攻撃を盾で跳ね返す。その反動で後ろへ倒れそうなゾンビ達にレイアが四天の棍で手痛い一撃を浴びせた。
そして、最後にギルティが無心斬りを放ち、ゾンビ達は崩れていく。

そんな中、ミーシアの翳した綺麗な手から光の粒子が傷付いたヒルダに纏わりついた。
次第に彼の傷が塞がり、生気が戻っていく。
しかし、回復魔法を唱える少女の気配に気付いたのか、親玉の気味の悪い眼球がぎょろりと向けられた。
その魔物を見、栗色の髪をした青年は叫ぶ。
「テメェーの相手は俺等だって言ってるだろうが!!」
オルバが皇帝の鞭で強かに打ち据え、ヴェロニカが煉獄斬り、ヒカルがフォーラルガで魔物の視線をミーシアから逸らそうとするのだが————————。
魔物は一切気に留めた風も無く、腐った丸太の様な両腕を振り上げる。
「ミーシアっ!危ない!」
ヴェロニカが声の限り叫んだ。
当の少女は叩かれた様に顔を上げ、瀕死状態のヒルダを庇う様に被さった。
しかし、彼女はヒルダに後ろへ突き飛ばされ、身を放した。
「ヒルダさん!!」
ミーシアの悲鳴と同時に巨大な両腕が振り下ろされる。
衝撃波が周囲を包んだ。
皆が絶句する。
ヒルダが————————。
その時だった。
巨大な両腕が血を撒き散らしながら宙を舞った。
腕を失ったゾンビの王は悲鳴を発し暴れ回る。
ヒルダはそんな親玉に向かって雄叫びを上げ突進し、両手持ちの刀を一閃。
そして——————。
生ける屍達は断末魔と共に息絶えた。
青年は魔物の死を見届けるとその場に片膝を突き立てて、荒い呼吸を繰り返す。
ミーシアははっとなり、彼の許へ駆け寄って行った。
「ヒルダさん!しっかり!」
彼女の手から光が溢れ出し、青年を包み込んだ。
戦闘を終えたシャク達もオルバ達もヒルダの方へ走って行く。
「ヒルダさん、大丈夫ですか!」
とシャク。
当の彼は刀を杖代わりにして立ち上がると盛大な溜息をついた。
「俺ァ、大丈夫だ・・・・それより・・・・・魔法陣を描いた野郎を・・・・うっ!」
痛みに顔を歪め、ヒルダは揺らめく。
そんな彼をミーシアは支え、言う。
「無茶ですよ!そんな体じゃ!未だ、回復しきれていないのに!」
「そうですぜ、ヒルダさん。俺等としちゃァ今、アンタに死なれちゃァ困るんですけど。」
オルバが肩を竦めて言い放つ。
「そーだよ、此処で一人戦闘不能になっちまったら元も子も無ぇ。シャク、此処は一度、休憩だな。」
とギルティ。
勇者は大きく頷く。
しかし、赤い髪の青年に向かってヒルダが怒鳴る。
「こ、此処で休憩なんざァ・・・し、してる暇は・・・無ぇーんだよっ!」
「でも!」
レイアは真剣な顔をして否定しようとしたが、ヒルダは遮る。
「早くしねぇーと・・・・げ、幻界が・・・・・」
「ヒルダさんとミーシアさん、そして、このお二人を護衛出来る方が此処に残れば、後の人達はマキラドーラの中へ入れるのではないでしょうか?」
スピオが微笑して呟いた。
「回復し終わった後、残った皆さんがやって来れば良いんじゃありません?」
皆が思案する。
確かに、スピオが言う通りにすれば効率は良い。
しかし、仲間がこれ以上離れ離れになるのはまずい。
何せ、滅界の魔物達は今まで戦ってきた中では手強いのだから。
その時——————。
「それじゃァ、俺が残りますよ。」
「オルバさん。」
シャク達は驚愕する。
当の彼は肩を竦めて続けた。
「さっき言った様に、此処でヒルダさんに死なれたら困るんですよ。だって、将来、ヒルダさんを殺るのは俺ですからね。」
「お、お前・・・・・」
ヒルダは額に血管を浮かび上がらせる。
そんな彼等を眺め、ヒカルが口を開いた。
「俺も・・・・残る。」
「ヒカル君!?」
レイアが驚き叫ぶ。
シャクも目を見開く。
魔法使いは皆を見回し、杖を握り締めた。
「俺が居れば・・・・視界に入った瞬間・・・・広範囲に攻撃出来るだろう?・・・そ、そうしたら、少しはオルバさんも楽だし・・・・」
「ヒカル・・・・」
口篭りながら言うヒカルにオルバは不気味に哂って言い放った。
「確かに。俺とヒカルが動けば、魔物なんざァゴミの様だぜ。」
意外な親友の決断にシャクは少し安心した。
あれだけシャク以外の人間とは言葉を交わす事が出来なかったヒカルが他人と言葉を交わしている。これは一種の進歩に違いない。
命懸けではあるが、この世界を通じて誰もが成長しているのが分かる。
俺達も、この世界の人達も——————。
だから、言う。
「なら、二人共、頼んだよ。」
勇者の言葉に二人は大きく頷いた。



続く…。

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2015-03-11 : 【異世界のイストワールⅠ】 : コメント : 0 :
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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Happy Halloween !! . 2014

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【勇者の特権を取り戻す為に俺は魔王を復活させ、無限ループを繰り返す。】


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