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異世界のイストワール  第12章~闇に囚われし向日葵の青年~  その2

※字抜けとか字間違いとかあるかもしれませんが、許して下さい。


~前回のあらすじ~
幻界にやって来た聖騎士カーツと天使ラー。二人は滅界から女神を救出し、勇者を神の国に連れ戻しに現れたのであったが、ラーはシャクを神の国へと連れて行った。残りの仲間達は幻界の町へ行き、魔王との最終決戦に備え、装備を整える事になり、シャクは神の国復活の為、女神のもとへ向かい神の国を甦らせた。


以下は続きです。


*——————死にそうだ。
大量の血を漆黒な空間内に滴らせ、荒い呼吸を繰り返す。
視界はぼやけ、体は揺らめく。
滅神王エウリアはそんな状態で笑顔を浮かべている大悪魔神官アプフェルを見つめ、立っていた。
白髪の少年は血を吐いたと同時に片膝を突き立て、咳き込んだ。
無理も無い。
彼の体には無数の深い切り傷があり、多量出血であるのだから。
そんな主を微笑んで眺め、アプフェルは言った。
「傷を癒して下さいませ、エウリア様♪このままじゃ、貴方様の身が持ちませんよ♪」
部下の言葉に少年は手の甲で口に付着した血を拭うと不適な笑みを返し、立ち上がった。
「悔しいが、それが良いかもしれない。このままでは確実にボクが死んでしまう。」
言うと、少年は白蛇に語りかけ、蛇に腕を噛ませた。
その途端、次第に魔王の傷が癒えていく。
先程まで切り傷だらけであった全身が元通りになってしまった。
そして、快活な笑い声を上げた。
「ハハハハハハ、雅か、君が此処まで強いとはねぇ・・・・恐れ入ったよ。」
魔王の言葉にアプフェルは頬を膨らまし、腰に両手を当てて言う。
「失礼で御座いますよ!ボクも一応は雑魚キャラっぽい奴ですけど、殺る時は殺りますよ!プンプン!!」
「ハハハハハ、すまない。許してくれ。」
笑う少年にアプフェルは少し拗ねた口調で訊ねる。
「あァァァァ!もしかしてぇ~、ボクの事マジで弱いって思ってたから蛇様達を御使用にならなかったんすか!?」
「フフ・・まァね。・・・と言うか、君は攻撃の手を休めないから蛇達に指示を下す暇があまりなかったと言うべきか・・・」
「本当っすか?」
とアプフェルは眉根を寄せる。
「あァ。・・・君の攻撃は実に素晴らしい。なるほど、ヘンリお兄様が君を部下に置いておいただけはある・・・・」
言うと魔王は不気味な笑みを浮かべ、アプフェルの紫色の目を見つめた。
そして——————。
「君のおかげでボクは少し学べた様な気がするよ。・・・ボクは魔力があるが、力など後が全て抜け落ちている・・・・君と一戦交えてそれが痛い程良く分かったよ。だから・・・ボクを少し強化するのにあたって・・・一先ず、君の能力が欲しい・・・」
エウリアの視線を受け、アプフェルは動けないでいた。
これが俗に言う<蛇に睨まれた蛙>だ。
しかし、辛うじて苦笑を浮かべ口を開く
「ボ、ボクの能力が欲しいって言われましてもですねぇ~・・・それは無理だと思われますが・・・」
部下の発言にエウリアは嘲笑うと応じた。
「ハハハハハ、いいや、それは決して無理な事では無い。ボクには容易いことだ。」
「そ、そうっすか・・・」
「君達は未だ知らない。・・・いいや、ボクが誰にも知らせて無いだけだ・・・・例え、サリエル兄さんにも・・・・この銀色の蛇の能力を・・・・」
少年の呟きの後、彼の後頭部に生えている銀色の蛇がアプフェル目掛けて疾風の如く牙を向けて掛かって行った。
アプフェルは危険だと感じ、回避しようとしたのだが動けなかった。
———————っ!・・・こ、これは麻痺!・・雅か、この子の眼の効果!・・・石化に加え・・・麻痺までも隠しもっていたのか!
い、いや・・・違う!これはボクがこの子に恐怖しているから動けないんだ!
首を銀色の蛇に噛み付かれた。
「くっ!」
激痛が全身を駆け巡る。
その拍子に体から何かが抜けていく。
力などでは無い。
———————何だ・・・これはっ!
「約束通り、君に全てを話さなければいけないね。ボクの計画全てをね・・・・」
痛さに耐えながらアプフェルは苦笑する。
「そ、そうだったねぇ~・・・・話して下さい・・よ・・・・エウリア様がこれから実行なさる・・・け、計画を・・・・」
と言った後、アプフェルは困った様な笑みを浮かべて続けた。
「と言うか・・・・その前に・・・・・・この蛇様はボクに・・・か、噛み付いて何してるんですか?・・・しょ、正直痛い・・・んですけど・・・・」
苦悶の声を上げる部下に魔王は笑うと返す。
「すまない。それから先に説明をしよう。君はボクの部下なのだからね・・・・」
口元を歪ませると少年は続けた。
「・・・その蛇はね、ボクが欲しいと思った君の能力を奪っているんだ。」
「!」
眼を見開いた神官を一瞥し、少年は言う。
「驚いたかい?・・・・・フフ、まァ、無理も無いね。色的には石化効果しか無い様に思えるが・・・実は特殊な蛇でねぇ・・・石化させる能力に加え、ボクが欲しいと思った相手の能力を奪ってしまうんだ。・・・・・でも、安心すると良い。ボクが君の能力を奪ったからと言って君が能力を使えなくなる事は無い。唯、能力を回復するのに少し時間がかかるだけだ。」
「つ、つまり・・・・ボクを実験材料にしたって事ですね・・・?」
とアプフェル。
「まァ・・・そう言う事になるか・・・」
少年は銀色の蛇の牙をアプフェルから外した。
アプフェルは噛み付かれ、牙の跡がついた首を擦りながら笑った。
「それならば、正直におっしゃって下さいよぉ~★ボク、怒りませんからァ~♪」
「フフ、すまない。だが、ボク自身のステータスが知りたかったのは本当の事だ。それに、君の能力が欲しくなったのは今さっきだ。」
「何すかァ~それぇ~★」
アプフェルは明るく笑うと目付きを鋭くした。
そして—————。
「ボク、エウリア様にステータス確認の相手をしてあげましたし、能力もあげましたよぉ~♪・・・だから、お聞かせ下さいませ・・・貴方様のご計画を・・・・」
部下の言葉に魔王は頷いた。
「あァ、そうだな。」



★ ★ ★


神の神殿。
穏やかな風が吹き通り、女神の涙と呼ばれる泉が流れている。
その神殿の奥——————神の椅子に座っている女神と勇者、そして、天使達は—————に居る。
そこで、女神は目を閉じ、勇者に語り掛ける様に言った。
「・・・天使ラー達が貴方をこの地へ導いて下さる間、私は瞑想をし、全ての現状を把握しました。・・・貴方達は幻魔の持つ幻界最強封印師の兄弟と共に、滅界へ赴き・・・滅神王達を封印すると・・・」
「はい、その通りです。」
とシャク。
勇者の返事に女神は少し悲痛な表情をし、続けた。
「その幻魔の計画・・・・・・私は少し無理があると思うのです。」
「!」
女神の言葉に周囲に集った天使達も頷く。
「無理が・・・あるのですか!?」
「はい。・・・幻界封印師、兄のディと弟のスピオの二人掛けの封印術は封印する相手に直接触れなければ封じる事が出来ない技です。・・・・・・・滅神王三兄弟を封印する為、滅神王長男ローレライ、滅神王次男ヘンリの二人に触れる事は貴方達、勇者側の皆さんの援護があれば容易です。しかし、滅神王三男エウリアを封印するとなると彼の体に触れる事は・・・・不可能に近いとしか思えないのです。」
「そ、そんなっ!」
驚愕の表情の青年を哀しい目で見つめ、女神が言う。
「貴方も一度は目にしたはずです・・・・滅神王三男の姿を。」
「っ!」
確かに、ニルバーナの村で見た。
後頭部から生える8本の蛇達の姿が脳裏に浮かぶ。
「あの8本の蛇のせいで魔王には近付けないと言う事ですか!」
「はい。・・・・・それもありますが、彼は見たモノを石化させる能力を持つ目を有し、貴方の言った様に凄まじい能力を有した魔蛇が居ます。・・・それに・・・」
女神は言葉を一旦切ると、目を閉じ、二呼吸程後に口を開いた。
「・・それに・・・滅神王三男エウリアは今将に変化しつつあります。」
「!」
「感じるのです・・・彼の闇のオーラが次第に強大になっていくのを。」
女神の意外な言葉にシャクは背筋が凍る思いをした。
滅神王三兄弟の中でも最強と謳われる三男エウリアが今も尚変化しつつある。
これは予想外だった。
「・・・恐らく・・・エウリアはローレライとヘンリの二人を吸収しようと考えているのでしょう。」
「吸収!?」
「はい。・・・・全てを破滅へと導き、真の滅びの神になる為に・・・」
体を抉られた様な感覚を与える現状の衝撃にシャクは眩暈を覚え、項垂れる。
今までに無い恐怖心が彼を襲う。
唇を噛み、拳を硬く創る。
これまで何とか力強い仲間達のおかげで太刀打ちできた。
だがしかし、今回ばかりは女神メリティスの言う通り—————不可能に近い。
「・・・封印もできねぇ・・・そんな強ぇ魔王から・・・どうやって世界を救えば・・・・」
封印すら難しい状態。
攻撃も届かないかもしれない戦闘。
あらゆる猛攻を仕掛けてくる幼き滅神王。
体を怒りと恐怖に震わす若き勇者を見つめ、女神は周囲の天使に目配せをした。
それに応じて、女神の許へ輝きを放つ美しい物体が差し出された。
輝く物体を手にした女神は勇者に声を掛ける。
「勇者よ、顔をお上げなさい。」
女神の言葉にシャクは顔を上げた。
顔を上げた勇者に女神は輝く物体を手渡す。
水面を表したかの様に綺麗な盾。
その盾の端にはルーン文字が刻まれていた。
その盾を女神から授かり、シャクは神聖な盾を眺めた。
「その盾は“神鏡の盾(しんきょうのたて)”と呼ばれる、神に選ばれた者だけが装備することを許された伝説の盾です。」
「神鏡の盾・・・・」
「その盾は普通の盾では跳ね返せない程強力な魔法や攻撃を跳ね返す力を宿し、装備者をあらゆる災いから遠ざける聖なる魔力を湛えた盾です。」
美しい盾を腕に装備し、シャクは女神を見つめる。
女神も勇者を見つめ返し、続けた。
「その“神鏡の盾”ならば、滅神王エウリアの攻撃を防げるはずです。」
「では・・・・」
「その盾でエウリアの攻撃を跳ね返し、怯ませ、その隙に封印師に封印をさせるのです。」
「しかし、女神様は封印する事は不可能だと・・・」
戸惑う青年に女神は微笑を返し、
「不可能に近いと言ったのです。・・・やはり、強敵と言えど己が弱点ですから。」
と言うと続ける。
「滅神王三兄弟から世界を守る・・・その盾を装備できる貴方が希望の光です。勇者シャクよ、旅立ちなさい。貴方達皆の幸運を心から祈っています。」
「はい!」
シャクは大きく頷くと女神を見つめ返した。
そんな勇者を見て、天使が女神に向かって口を開いた。
“女神様、私もお供しても宜しいでしょうか?”
「ラー・・・」
とシャク。
“私が見つけた勇者様です。なので、最後まで見ていたいんです。”
女神は天使の言葉を聞き、薄ら笑いを浮かべた。
「言うと思いましたよ、天使ラー・・・」
“女神様!それでは!”
「貴女には此処でやって欲しい事があります。なので、同行は出来ません。」
そんな女神の言葉に天使ラーは目を見開いた。
非常に悲しい顔をしてる天使に勇者は言う。
「此処で、祈っててくれよ。必ず、戻って来るからさ。」
勇者の言葉にラーは俯いていたが、大きく頷いた。



★ ★ ★



暗黒の空間。
「ボクはね、アプフェル・・・」
白髪の少年は目を見開くと言い放つ。
「全てを支配したいんだ。」
その台詞にアプフェルの背筋が凍った。
それと同時に興奮してきた。
———————このぞっとさせられる様な恐怖感!そして、興奮!!フフ、やっぱりエウリアちゃんはボクと共鳴しそうだ♪
「上の魔王二人の蘇生道具として生み出されたボク・・・それを思い出す度にどうしてもこの上極まりなく、猛烈に激烈に壊烈に腹立だしいんだ!!だから、ボクはその蘇生道具と言う汚名を抹消すべく、全てを超える様な強さが欲しい!」
叫ぶと少年は呼吸を整え、アプフェルを見て言った。
「・・・一先ず、分かったかい?」
「うん★とっても♪」
と神官は笑顔で頷く。
それを確認し、魔王は安堵の息を吐く。
そして、続けた。
「それで、ボクは自身の強さを今さっき測った。そして、先ず欲しい能力は取り入れた。・・・・次は、魔王二人の吸収。それでボクは全ての能力を遥かに上げる事が可能になり、世界を支配できる。・・・・・・・しかし・・・此処で問題が発生する・・・」
言葉を区切ったエウリアを眺め、アプフェルは首を傾げる。
「問題が発生する・・・ですかァ~?・・つーか、発生しますかァ~?」
「あァ・・・残念ながら発生してしまうんだ・・・」
魔王の悩み顔に部下も悩み顔を浮かべる。
———————問題発生ねぇ~・・・・この際、エウリアちゃんに降り掛かる問題って正直関係無いんじゃないのかなァ~・・・・。
だから、少しふざけてみた。
「あァっ!もしかして、二人を吸収した後の性格の問題か何かですかァ~?」
アプフェルは手を叩いて、笑う。
「ほらァ~、ローちゃん様って少し‘あっち系’の要素あるじゃないですかァ~、そんでもって、ヘンリーはこう・・何か気難しくてぇ~・・・それプラス、エウリアちゃん様の性格もありますしィ~♪だから、“どの性格にするぅ~?”みたいなァ~・・・アハっ★」
神官の戯け言葉に少年は一瞬目をパチパチさせたが、悩み顔を進行する。
「・・・確かに、それは考えていなかったな・・・・吸収した後は一体性格は誰になるのか・・・はてさて・・・・」
真剣に悩み出した魔王を見てアプフェルは笑いを堪える。
———————ぶあはははははっ!何、その真剣振り!!超可愛いんですけどぉ~★てか、冗談で言ったのにマジで受け止めてるよ~何もぉ~超絶可愛いじゃんかァっ!!いや、ボク、もう本当に今此処でこの子に殺されても良いっ!つーか、殺したい!見てられない!
「エウリアちゃん様ァ~!!きっと、そんな事は無いと思いますよ♪多分、性格は貴方のですって!」
アプフェルは笑いながら言う。
部下の言葉を聞き、少年は考えるの止め、「うむ、そうだな。」と言う顔をした。
そして、悪戯な目をした神官に視線を向け、口を開いた。
「話を元に戻すが・・・アプフェル・・君にこの問題が分かるか?」
急に問い掛けられ、アプフェルは肩を竦め、
「全く分からないですねぇ~・・・馬鹿ですみません★」
と言い、舌を出す。
そんな部下を見て鼻で笑い、幼き魔王は目を静かに閉じ、口を開いた。
「・・・フフ、魔王二人を吸収した後の問題・・・それは—————————」


★ ★


幻界の各地にある武器屋、防具屋、装飾品屋、道具屋の数々。
そんな店を転々と回る勇者とリザを除いた仲間達。
リザはエルガと幻魔の館で待っていると言った故のメンバーだ。
今、彼等が居るのは“ドワーフの町”である。
そこで強力な装備品を貰い受けようと言うのである。
図体が馬鹿でかいドワーフ達はヒカル達を見るや否や、幻魔に言われた通りの品を差し出してきた。
「これがオラ達、ドワーフ族達が勇者様達の為に最強だと生み出した装備品の数々だヤ!でもまァ、かなり力が無ぇーと装備はできねぇーだヤから、騎士とかが装備してくれるありがたいだヤ。」
ドワーフ族達はヒカル達に装備品を与えてくれた。


—————————————————————————————————————————————
・大地のブーツ→土属性のダメージを軽減する不思議なブーツ。だが、少し重い。
・土巨人の斧→古の土巨人が愛用していたと言う大きい斧。属性は土。
・キュクロプスアーマー→額に丸い眼を持った野蛮な巨人が使っていた重い鎧を使い易く改造したもの。
————————————————————————————————————————————


確かにドワーフ族達の言う通りでかなり力が無いと装備出来ない様に思えた。
しかし、そんな事にお構いなしにヴェロニカが大地のブーツを手にし、装備していた。
「ヴェロニカ!」
とラヅ。
少しは尊敬している青年の注意に彼女は耳を傾ける事無く、ブーツを装備し喜んでいる。
「ハハ、何かこのブーツ、意外と良いんじゃねぇーの?・・・まァ、ちっとばかし重いけどさ。」
そんな彼女を見て、オルバが生意気げに呟いた。
「まァ、このまな板女が装備できるんなら良いじゃねぇーっすか?コイツ、蹴りが凄いんだから。」
「っ!」
青年の言葉に苛立ったのかヴェロニカは睨み、何かを言おうとしたが、ギルティに遮られた。
「そうだな。コイツが装備できたんだたったら別に構いはしねぇーよ。・・・で、そっちの装備品は俺は装備無理。俺、軽い物じゃねぇーと駄目だから。」
「ギルの旦那と同じで俺も。」
とオルバ。
彼等の言葉にヒカルは内心思う。
————————確かに、ギルティさん達の言う通りだな。ニルバーナの人は大体、軽い装備品しか装備していない。・・・・となると、騎士系統の人が装備出来る事になるな。
ヒカルが思案していた時だった。
「俺は斧は装備出来ないんですよ。俺の得意装備は槍ですから・・・」
と聖騎士カーツが苦笑した。
「私も斧は装備出来ない。あまり、力が無いのでな。」
ペインも悔しそうに言った。
そう皆が斧を装備する事を拒んでいた時。
ゼノが進み出て斧を受け取った。
「僕が装備しましょう。」
「ゼノさん・・・」
とレイア。
「こう見えて僕、斧を装備して戦う訓練をしていたので。」
「そ、そうなんですか・・・」
皆が少し驚く。
そんな皆を眺めながらドワーフ族が言った。
「そんなら、そこの緑の兄ちゃん、このキュクロプスアーマーもセットだヤ。」
「?」
「その土巨人の斧とキュクロプスアーマーはセットで装備してこそ本領を発揮するだヤ。だから、一緒に装備してくんろ。」
ドワーフ族の言葉にゼノが装備する事になった。


★ ★


黒紫色の青年は城内の廊下を歩きながら不適な笑みを浮かべていた。
———————あの神官・・・・かなりの曲者だな・・・・。
独りそんな事を思いながら歩を進める。
しかし、青年は背後から何者かにナイフを首筋に当てられ、妖艶な笑みを浮かべて立ち止まった。
そして——————。
「よぉ、久しぶりだなァ・・・・」
と背後の気配に声を掛けた。
「久しぶりに会ったってのに、とんだ挨拶だなァ・・・・フフ・・・」
青年の笑い声に苛立ったのか背後から忍び寄って来た影はナイフを離し、声を発した。
「こんなところに貴様が居るとは・・・奇遇だな、サリエル。」
「よく言うぜ・・・こそこそと俺の後を付けていたくせに・・・」
「知っていたのか?」
「まァーな・・・・暇だから誘いていたまでだ・・・・フフ・・・」
サリエルは言って笑うと、刀の柄を素早く握り、疾風の如く舞を演じて背後の影を斬ろうとした。
しかし、彼の切っ先が影に届く事は無かった。
横から新たな白衣が飛び出し、サリエルの刀を弾いた。
弾かれサリエルは鼻で笑う。
「中々、良い部下を持ってやがるな・・・お前・・・」
「ヘンリ様には指一本触れさせません。」
彼女は言うと、主の前に立ち、身構えた。
そんな部下を見、背後の気配—————滅神王次男ヘンリは眼鏡を押し上げた。
「サリエル、貴様、何故エウリアと一緒ではない?独りで何をしているのだ?」
「何もしてねぇーよ・・・俺ァ唯、散歩してんだよ。昔から俺ァ散歩が好きでね。」
「ふざけるな。貴様、一体何を考えている!」
「何も。」
不適な笑みを浮かべている青年を睨み、ヘンリは続けた。
「貴様・・・・アプフェルと何か繋がっているな?」
魔王次男の言葉にサリエルはにやりと哂う。
その反応にヘンリは怒りを覚える。
「アイツと何を交わしたのだ!!全て吐き出してもらう!!これ以上、人間が知るべきでは無い!!」
しかし、当の人間は妖艶な笑みを浮かべたままだった。
それが益々ヘンリを怒らせた。
「貴様ァっ・・・」
その時、人間が笑い声を上げた。
「何が可笑しいのだ!」
「フフフ・・・・・何が可笑しいかって?・・・貴様等の焦り顔だよ。これは哂える。」
「っ!」
サリエルの発言にヘンリは魔法を放った。
高位雷属性魔法フルミーガ。
巨大な雷の槍がサリエルの体に突き刺さり、吹き飛ばした。
吹き飛んだ青年は電気で痺れる体を奮い立たせ、笑みを浮かべている。
そして———————。
「・・・フフフ・・ハハハハハハ・・・痛か無ぇな・・・・」
「なっ!」
「ヘンリ様、私が止めを刺して参ります。」
悪魔のナイフを構えるリンネルを片手で制し、ヘンリは妖しい人間を眺める。
———————この人間・・・姿が人間であって中身は人間では無い様に見えるのは何故なのだ?
ヘンリは内心、驚愕する。
そして、目を見開く。
———————ま、雅かっ!
言葉にならない寒気と恐怖がヘンリの体を襲った。
その時だった。
コツコツと誰かの靴音が廊下に響き、明るい声が掛けられた。
「ちょっと、何楽しい事やってんの~?ボクも混ぜてよぉ~★つーか、サリエルちゃんに手を出すなって言ったくせに、攻撃してるしィ~★」
「アプフェル!」
ヘンリは以前の部下の名前を叫び、警戒した表情を浮かべた。
アプフェルは白衣の両ポケットに両手を突っ込み笑顔で歩み寄ってきた。
「やっぱり、サリエルちゃん此処に居たんだ★・・ふふ~ん、エウリアちゃん様の言う通りだった♪」
「エウリア・・だと・・」
神官は驚く次男魔王を一瞥し、怪我をしている青年の方へ到着した。
そして、サリエルに微笑む。
「大丈夫ぅ~?サリエルちゃん?」
「あァ、何て事ァ無ぇーよ。」
「そうだと思ったっ★フフ、でさ、エウリアちゃん様からの伝言!」
とアプフェルは笑うと、エウリアの真似をしながら言った。
「“ボクのお部屋で待ってテ”だって!」
「そうか。」
不適に笑う青年を見ながら神官は目を輝かせる。
「どう?似てた?似てた?」
しかし、サリエルは不気味に微笑みながら刀を収め、エウリアの部屋へと歩き出した。
そんな冷たい人間を困り苦笑をして見て呟く。
「もう~、相変わらずボクには素っ気無いんだからァ~!」
そして、彼がサリエルの後を追おうとしていた刹那。
「アプフェル、貴様、一体何を企んでいるのだ?」
ヘンリの冷やかな声に神官は振り返らず歩を止め、にやりと口元を緩ませた。
「・・・貴様であろう?ローレライを襲撃しろとエウリアに命じたのは。一体何を・・・」
「心外だなァ~・・・ボクがローちゃん様を襲撃しろって命令したって言うの?」
アプフェルは笑う。
「貴様しか居ないだろう!」
「何でボクって決め付けるの?ヘンリーも相変わらずボクには冷たいねぇ~♪・・・でも、そう言うトコ好きだよ。」
「黙れ!答えろ、アプフェル!ローレライを襲撃する様にエウリアに命じたのは貴様だろう!」
ヘンリは怒鳴ると身構えた。
その主の反応にリンネルも殺気を放つ。
答えによっては斬る。
そんな二人に背を向けたままアプフェルは盛大な溜息をつき、横顔を二人に向けて微笑んだ。
その笑みがヘンリを怒らせた。
「アプフェル、貴様ァァァァっ!」
叫び、ヘンリは魔法を、リンネルは雷鳴斬りを放とうしたが、アプフェルの一言で動きを止めた。いや、制止させられた。
「ボクに危害を加えない方が良いと思うよ★」
「なっ!」
動きを止めた二人を笑って眺め、彼は続けた。
「あァ、それと・・・・エウリアちゃん様がね、“後でディナーを一緒にしたい”って言ってたよ★だから、行ってあげてね♪」
毒林檎の様な神官は言うなり、サリエルの後を追い去って行った。
そんな大悪魔神官を睨み、ヘンリは拳をつくった。
———————アプフェル・・・・貴様はやはり・・・!
その時だった。
城内が大きく揺れ、大爆発音が響いた。




★ ★ ★



ドワーフ族達の町から少し近い場所に位置するタルメ族達が暮らしている町。
そこへ向かおうとするヒカル達一行。
タルメ族——————金属や石などを好む小柄な幻獣達である。
ヒカルは地図を見ながら皆に言った。
「このドワーフ族達の町から少し東に向かった先にタルメ族と呼ばれる幻獣達の町があるらしいので、今からそこに向かいます。」
魔道士の言葉に仲間全員が各々返事をする。
とその刹那。
ヒカル達の前に一筋の光が舞い降りた。
その輝きの中から出て来たのは——————————。
「シャク!!」
ヒカルとレイアが叫んだ。
二人に名前を呼ばれ、勇者は明るく笑う。
「よぉっ!戻ったぜ。」


そして数分後、ヒカル達は勇者を迎え入れると今からの行動内容を説明した。
「・・・俺等は今から、幻魔様が下さる装備品を求めて各町を回るんだ。それで、今はドワーフ族達の町でゼノさんの一部装備とヴェロニカさんの一部装備を手に入れたところだ。」
「そうか。」
シャクは説明を聞くと、装備している輝かしい盾を皆に見せた。
「俺も一部装備は手に入れたぜ。」
「それはっ!」
綺麗な盾を驚愕な表情で見つめ、封印師兄弟が叫んだ。
「その盾は“神鏡の盾”!」
とディ。
「その盾は普通の盾では防げないあらゆる攻撃を跳ね返す伝説の盾・・・・なるほど、その盾を女神様がシャクさんに差し出されるとは・・・・これは滅神王を封じる確率が上がったと言うものですね!」
スピオが拳を突き上げる。
その言葉に皆の顔に光が宿った。
「・・・・つまり、その盾があれば早い話、無敵って事っすよね?」
オルバが哂う。
「そうですね。」
「これならシャクを前衛に出していさえすりゃァ、魔王も楽勝だな。」
「だが、危険過ぎる。」
オルバの発言にヒルダが否定する。
「幾ら勇者と言えどそれは駄目だ。」
「何でですかい?回復魔法唱えれる奴は居るでしょう?」
部下の問い掛けにヒルダは唇を噛んだ。
そんな彼を見つめ、ミーシアが口を開いた。
「勇者様だけに危険を集中させるのは嫌です。・・・・人間界はやはり自分達で守っていかなければ・・・」
「ミーシア・・・」
「だから、幻魔様はみなさんに各々装備品を与えて下さっているんです。」
彼女の発言にヴェロニカが声を張り上げる。
「そうじゃ!シャクさん達だけに全てを背負わせるのは駄目じゃて!此処はみんなで強力して突破するんじゃ!」
「ヴェロニカの言う通りだ。それは俺も同意だな。」
とラヅも頷く。
「同じく私もだ。」
「俺もです。」
ペインに続き、カーツもゼノもエイクも頷く。
ギルティも少し笑みを返す。
そんな仲間達を眺め、シャクは涙を堪える。
———————俺は勇者として何も果たしていないのに・・・・みんな・・・っ!
何とも言えない顔をしている青年を見つめ、ペインが叫んだ。
「よし、早く装備を整え、滅神王を叩くぞ!」
その雄叫びに皆が大きく頷く。
————————此処からが本番なんだ・・・此処からが・・・。
だから、シャクも声を上げる。
「それじゃ、幻魔様が用意して下さった装備品を手に入れて滅界へ急ぎましょう!!」


★ ★


「エウリア様が何かを隠している・・・だと!?」
とカルコスは声を殺して叫んだ。
その問い掛けに魔王は笑って頷く。
「えぇ。・・・・でも、私の勘だけどね。」
「何を隠しているって言うんだ!!」
驚愕の表情をして問う部下に微笑を向けていたものの、ローレライは目の色を変えた。
彼は鋭い視線を扉の方へ向けて言う。
「何方かしら?盗み聞きなんて何時からの御趣味になったの?」
魔王の言葉にカルコスははっと気付き、身構えた。
——————っ!又、感情に囚われて周りを警戒していなかった!!この魔力は・・・・!!
扉がゆっくり開き、白髪の少年が入ってきた。
彼は3匹の蛇の頭を撫でながら微笑を浮かべている。
そんな弟を見ながら、ローレライは笑う。
「あら?エウリアちゃんまでお見舞いに来てくれたの?」
「うン、ローレライお兄様には随分と酷い事をしたからネ・・・・謝らないとと思っテ。」
「そう・・・」
ローレライは目を静かに閉じると盛大な溜息をついて呟いた。
「それじゃァ・・・どうして殺気を放ってるのかしら?・・・・お兄様、その理由が知りたいわ。」
魔王の台詞にカルコスはローレライの前に出て、白衣から悪魔のナイフを取り出し構えた。
そんな大悪魔神官を舐める様に下から上まで見、エウリアは哂った。
「へぇ~・・・やはり、長男なだけあって、あれ程のダメージを負っても回復出来ているみたいだな・・・・合格だ・・・」
言うと一歩近付く。
迫り来る恐怖にカルコスは耐えながら、冷静な口調で言い放った。
「滅神王エウリア様、恐れ入りますが、現在ローレライ様は治療中の身でしてあまり御相手が可能な御体ではありません。それ故、面会は又の機会にさせてはもらえないでしょうか?」
カルコスの発言に少年は残忍な笑みを浮かべ、一歩踏み出した。
「大悪魔神官カルコス・・・君は素晴らしい魔力を持っている様だけど・・・残念ながら今は君に用は無い・・・」
再び少年は一歩踏み出す。
そして——————。
「・・・退け、邪魔だ。」
一歩。
しかし、カルコスは退けない。
そんな神官を見つめ、ローレライは言った。
「カルトス君、退けなさい。」
「拒否する。俺は・・・・退けない。」
頑固な悪魔を見つめ、少年は続ける。
「君も頑固だな・・・・主の命令を聞かないなんて・・・」
「もう一度申し上げます。・・・・滅神王エウリア様、恐れ入りますが、現在ローレライ様は治療中の身でしてあまり御相手が可能な御体ではありません。それ故、面会は又の機会にさせてはもらえないでしょうか?」
一歩。
そして、吐息。
「・・・カルコス、君をあまり攻撃したくないんだよ。だから・・・・退け。」
「拒否します。」
神官の言葉に三男は目付きを変えた。
そして、一歩進み————————。
「ボクに何度も言わせるな・・・退け、邪魔だ。」
エウリアは一瞬でカルコスの耳元に近付き、囁いた。
その声には凄まじい殺気がこもっていた。
囁いたと同時に爆発音が響いた。
煙と部屋が崩れる音がする。
埃が舞い破壊され、荒れ果てたローレライの部屋に少年は突っ立っていた。
「フン・・・退かないから・・・・」
と呟き、エウリアは大穴の先を見つめた。
そこには部下を庇った魔王の姿があった。
一瞬驚き、三男は哂う。
「凄いねぇ・・・やはり長男だ・・・至近距離で死ぬ可能性100%の部下を一瞬で庇うなんて・・・・」
カルコスは硬く閉じていた目を開いた。
そこで驚愕に目を見開く。
「っ!」
あの魔王の間で生じた時と同じ様に魔王はカルコスの前に立っていた。
血塗れで——————。
「ローレライ様!!」
名を呼ばれ、魔王は片膝を突き立てる。
呼吸が乱れ、息をするのがやっとらしい。
「ローレライ様!」
「カ、カルトス君・・・ヘンリー達を連れて早く逃げてちょうーだい・・・このままじゃ・・・」
「っ!」
ローレライは言うと血を吐く。
右腕を深く傷付けられ、回復していない身であるにもかかわらず、魔王は又してもカルコスを庇ったのだ。
「このままじゃァ・・・っ!」
滴る鮮血を見、カルコスは固まる。
——————ど、どうしたら良いんだよ!俺は・・・俺は!
混乱状態に陥り、感情の制御が不可能になっている部下をローレライは眺め、言う。
「・・カルトス君・・・こ、これは上司・・命令・・・よ・・・」
「黙れよ、ローレライ!」
と顔面蒼白のカルコス。
そんな彼に血塗れではあるが笑顔を向けて、ローレライは言う。
「は、早く・・・」
その時だった。
「ローレライ!カルコスさん!」
一番聞きたかった声でもあるが、一番聞きたくなかった声がエウリアの立つ方から聞こえた。
その声でカルコスもローレライも視線を向ける。
「ヘンリ様!!」
ヘンリとリンネルは破壊されたローレライの部屋と部屋に開いた大穴の先に居るローレライとカルコス、エウリアを見つけ驚愕の表情をしていた。
やって来た次男を見つめ、エウリアは笑った。
「ヘンリお兄様じゃないですか、何故此処へ?」
「何故此処へって・・・エウリア・・お前・・・」
蒼白なヘンリを一瞥し、エウリアは肩を竦めた。
「はぁ・・・アプフェル、言わなかったのかなァ~・・・・<ヘンリお兄様は後>だって。」
「!」
その言葉と同時に三男の銀色の蛇が動いた。
ヘンリの首に向かって疾風の如く食い掛かってくる。
しかし、魔王次男に牙が及ぶ事は無かった。
銀色の蛇の攻撃をリンネルは悪魔のナイフで弾く。そして、我が主の前に立ちはだかる。
「リンネル!」
「ヘンリ様、此処は非常に危険で御座います。一先ず、ローレライ様をお連れして共にお逃げ下さいませ。」
「しかし!」
「エウリア様は私とカル兄さんで何とかして制止します。なので、ヘンリ様は早くお逃げ下さい。」
リンネルは言うと、カルコスに向かって叫んだ。
「カル兄さん!!転移魔法を唱えて下さい!お二人に!!」
妹に叫ばれカルコスは大きく頷くと素早く詠唱に入った。
それを眺め、エウリアは哀しそうな表情をした。
「お兄様達って昔と同じでやっぱり意地悪だ・・・ボクから逃げようとする。」
少年は言うと妖艶な笑みを浮かべて続ける。
「でも・・・誰もこのボクからは逃げられやしないけどな。」
その一声で白髪の少年の全身から壮絶な波紋が響き渡った。
その反動で周囲が破壊され、吹き飛ばされる。
「ぐはっ!」
ヘンリもリンネルも壁に激突する。
凄まじい威力とおどろおどろしい気力。
次第にエウリアの魔力が膨れ上がる。
その刹那、カルコスの転移魔法の詠唱が完了した。
しかし、魔法はいつでも発動させる事が可能ではあるが、二人の転移場所が分からない。
——————今、何所へ転移させても危険だ!
そんなカルコスを見たローレライは血を吐きながら小さな声で呟いた。
「・・カ、カルトス君・・・・私以外のみんなを・・・げ、幻界へ・・・飛ばしてちょうだい・・・・」
「!」
「お、お願い・・・・幻・・魔の・・館に・・・・」
「何で!?あそこには勇者が・・・!」
「だ、だから・・・良いのよ・・・お、お願い・・・・勇者様達と・・・手を組んで・・」
「はっ!?てか、ローレライはっ!」
カルコスの必死の問い掛けに魔王長男は傷付いた顔で弱々しく微笑む。その笑みには凄まじい訴えが込められていた。
「わ、私は・・・お・・仕事が・・あるから・・・・・」
「何言ってんだよ!」
「お、お願い・・・・・一度くらいは・・・我侭聞いてよ・・・・」
微笑む魔王にカルコスは悔し涙を流しながら、呟く。
「・・・・・・・・・一度以上に・・・俺はお前の我侭は聞いてるけどな・・・・今までの中で一番の我侭だぜ・・・・」
拳をつくるとカルコスは涙を流しながら叫んだ。
「デジョン!!!」
神官の叫び声と共に、魔法文字が浮かび上がった。
そして、転移させたい本体へ纏わりつく。
しかし、逃げさせやしな様にとエウリアはヘンリへと蛇達を伸ばしたが——————。
「リンネル!!」
ヘンリの前にリンネルが立ち、蛇3匹は彼女へと巻きついた。
どうやら、蛇達の魔力で転移魔法を妨げ、ヘンリを捕らえる心算だったのだろうが、リンネルがヘンリを庇った為、彼女だけの転移魔法の効果が打ち消されたらしい。
ぐいぐいと体が縛り上げられるのだが、リンネルは無表情だった。
そんな彼女をヘンリは自身の体が次第に薄れていくのを感じながら必死に叫んだ。
「リンネル!!!」
「ヘ、ヘンリ様・・・どうか、早く・・・お逃げ下さいませ・・・」
「馬鹿言うな!俺はお前に命令したのだぞ!“傍から離れるな”と!・・・リンネル、お前は俺の命令に背くのか!」
「も、申し訳御座いません・・・」
「っ!」
ヘンリは拳をつくり、悔しさに涙を浮かべる。
もう体の半分以上が消えかかっている。
「カルコスさん!デジョンを解除できますか!」
次男は同じく消えかかっている大悪魔神官に叫んだ。
しかし、返ってきた返答は————————。
「すみません・・・・」
「っ!」
大切な者を守る事が出来ずに彼等は消えた。


★ ★


部屋の中。
大爆発音が聞こえる。
そんな音を耳にし、椅子に座っているサリエルは不気味に微笑む。
「フフ・・・お前が命じたのか?エウリアに・・・・」
青年の問い掛けに積み木で遊んでいる大悪魔神官アプフェルは笑う。
「ううん、“命じた”んじゃなくて、“提案”したんだよ♪・・・“今ですよ”って♪」
けたけた笑うとアプフェルは立ち上がり、林檎の飴を白衣のポケットから取り出し口に入れた。
「何せ、ローちゃん様とヘンリーを吸収するって言い出したからねぇ~・・・・これは今でしょう?だって、ローちゃん様、深手を負ってるんでしょ?てか、負わしてくれたんでしょ?」
「まァな・・・」
「だから、約束通り、あの部屋の書物はサリエルちゃんであげるよ♪」
「・・・フン、そんなモンなんざァ要らねぇーよ・・・」
青年の笑みを見、アプフェルは残忍な微笑を堪える。
———————問題を埋めるのが・・・この人間だなんて・・・・ふふん★
滅神王エウリアと居たあの時の事が思い出される———————。

* * * * * * * *
「・・・フフ、魔王二人を吸収した後の問題・・・それは・・・“器”の問題だ。」
「“器”の問題・・・ですか?」
アプフェルは主の言葉に問い返す。
それにエウリアは頷く。
「二人の魔王を吸収した後・・・その強大な力をボクが制御できるかが問題なんだよ。・・・・・つまり、ボクの体で力が収まりきるか・・・と言う事だ。」
少年の言葉に神官は微笑む。
「確かにィ~、エウリア様って小さいですもんねぇ~・・・だから、爆発しちゃうかもって言う問題ですよねぇ~。」
「あァ・・・そこでだ、ボクは実験したいんだよ。きっと、ボクの今の体じゃ力は収まりきらない。だから、サリエルを使いたい。」
「ほえ~・・・サリエルちゃんをねぇ~・・・♪」
アプフェルは不気味な笑みを浮かべた。
しかし、疑問が膨れ上がってきた。

何故、魔族では無い人間なのか。

——————魔族では無い人間じゃァ、絶対力を制御出来ないでしょ?
と密かにアプフェルは思う。
それを察したかの様に少年が笑う。
「サリエルは人間で魔族では無いから、サリエルに乗り移ったとしても無意味だと思うかもしれないが、心配しなくて良い。その為にボクは今までサリエルと共に暮らして来たんだ。」
「ふ~ん・・・」
アプフェルはにやりとする。
それを眺め、エウリアは続けた。
「ボクと居たが為にサリエルは次第に魔族化していっているんだよ。・・・・・・つまり、人間らしい感情を持てなくなり、身体能力も人間ではなくなっていってるんだ。素晴らしいだろう?」
その問い掛けに毒林檎の様な神官は飴を取り出し、舐め回しながら逆に問い掛けた。
「凄いけどですねぇ~・・・でも、どうしてサリエルちゃんがエウリアちゃん様と居ただけで魔族化していってるんですか?」
「フフ、そう言うと思ったよ。・・・では、教えよう。」
エウリアは言うと目を静かに閉じて語り始めた。
「・・・・一度、ニルバーナでサリエルが死に掛けた事があったんだ。その時、ボクはサリエルを死のどん底から助けた。・・・・白蛇の回復魔法でな。」
「うんうん♪」
「白蛇は噛み付く事によって相手を癒す。・・・つまり・・・」
「噛んだ拍子に何かしたって事ですか?」
とアプフェル。
その神官の言葉に少年は哂う。
「御名答。・・・ボクが白蛇で同じ魔族である魔物の傷を癒すのは害は無い。しかし、人間がボクの白蛇で負った傷を回復するには何らかの代償が要る・・・」
冷静に言うエウリアの声はどこか禍々しかった。
それがアプフェルを興奮させた。
「ボクの白蛇がサリエルに噛み付き、傷を癒している間、ボクはボク自身に流れる魔族の血をサリエルに注入していたんだ。」
「だから、何れサリエルは魔族になっていくって事?」
とアプフェルが興奮した状態で問う。
そんな部下に向かって少年は頷くと続けた。
「サリエルをボクの“器”にすれば、彼の剣術も手に入るし・・・・何せ、上の滅神王以上の恐ろしい憎悪を秘めているから都合が良い。・・・どうだ?ボクも中々考えただろう?」
「そうですねぇ~・・・でもまァ、エウリアちゃん様が芝居をなさっていたとは気付きませんでしたねぇ~♪」
「そうか。・・・・・・いや、ボクとしても封印から解放されるとは思わなかったからな・・・急いで考えた計画だった。」
「にしても素晴らしい★はぁ~あ、ボク、やっぱりエウリアちゃん様の部下になって良かったァっ!これからも宜しくお願いしますよ!」
アプフェルは言うと微笑を浮かべた。
少年も哂う。
「ニルバーナと言う村に住む、馬鹿な人間に拾われて良かった。・・・・・・・人も魔物も疑おうとしない馬鹿な人間にな・・・・・・思い通りに操るなど容易い事だ・・・・」
「そうですねぇ~♪」
満面の笑みの彼を一瞥し、幼き魔王は言う。
「よし、今から滅神王城内へ戻る・・・」
魔王の言葉にアプフェルは妖しい紫色の目をゆらゆらと煌かせて口を開いた。
「・・・エウリアちゃん様、それに当たって一つ提案があるのですが、良いですか?」
「何だ?」
「・・・先程、エウリアちゃん様方がローちゃん様達を襲撃なさったでしょう?あの時、ローちゃん様・・・随分と深手を負ったんじゃァありません?」
「負ったな・・・カルコスを庇って。」
それを聞き、アプフェルは何かを企んでいる様な笑みを浮かべて続けた。
「そこで、深手を負ってあまり動けないローちゃん様を今、吸収なさるってのはどうですか?これって凄い良い提案じゃありませんか?」
部下の提案に少年は目を静かに閉じた。
「ボクも君と同じ事を考えていた・・・奇遇だねぇ。」
「はい★」
「・・・で、ボクがローレライを吸収している間、君はどうする心算だ?」
「ボクですか?・・う~ん・・・サリエルちゃんを監禁?」
「心配するな、サリエルに掛けている術は解けない。」
「そうなんですかァ~♪・・・でも、念には念を入れて。ほら、サリエルちゃんって何を考えているか分からないでしょう?」
笑顔で言うアプフェルを見、エウリアは肩を竦めた。
「好きにしろ。・・どの道、サリエルはボクの“器”だ。大切に扱ってくれ。」
「分っかりましたっ★・・・では、エウリアちゃん様のお部屋で待機させておきますのでぇ~早くおいで下さい★」
「あァ、すぐに終われば行く。」
* * * * * * * * * * *

この憎悪に満ちた人間を見ていると何故か興奮してくる。
アプフェルはそんな感情を抑え、主の帰りを待つ。
——————早く、面白いものを見せてよねぇ・・・エウリアちゃん様ァ~♪




続く…。
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2015-03-05 : 【異世界のイストワールⅠ】 : コメント : 0 :
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プロフィール

十二仙 百露

Author:十二仙 百露
性別:女
年齢:18
身長:158cm
血液型:AB
誕生日:9月12日
好きな食べ物:甘い物
嫌いな食べ物:苦い物
趣味:小説、書道、絵を描く、模写、ゲーム、ゲーム実況見物

 

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